運送業の未来に貢献/社会保険労務士法人 NACマネジメント研究所 代表社員 小林 弘和

社会保険労務士法人 NACマネジメント研究所 代表社員 小林 弘和 氏
私が代表を務める社会保険労務士法人NACマネジメント研究所は、現在顧問先企業約250社のうち7割程度が物流運送業である。物流運送業においては、2024年問題に直面し、ドライバーをはじめとする従業員の人事・労務管理制度の大幅な改定などが必要となってきている。
私が物流運送業に深くかかわることとなったきっかけは、開業4年目の2000年に東京都トラック協会が始めた「労務管理相談事業」の相談員になったことだった。
それまでも運送業の顧問先はあったものの、会社員時代はまったくの異業種で、とくに運送業に対する知見が豊富だったわけではなかった。相談を受けるなかで、問題の解決のために懸命に学んだことや考えたこと、実際の問題に対応しながら積み重ねた経験と知識が、現在につながっている。
運送業界の状況をみると、1990年の貨物自動車運送事業法施行以降、トラック運送事業の規制緩和によって新規参入事業者が急増し、事業者数は4万72社から2023年には6万2848社と1.5倍以上に増加している。
一方、この間、わが国の長期の経済低迷により運送需要が伸び悩んだ。運送業界全体が過当競争状態となり、厳しい経営環境を招くこととなってしまった。
現在、運送業界が対処しなければならない最大の課題は2024年問題といわれている。行政としては、過当競争の問題に対処して社会のインフラでもある物流を担う運送業界の健全化を図るため、労働時間の規制および拘束時間の規制を強化し、対応できない既存事業者は市場から退出させることにより事業者を選別することを意図しているように考えられる。
運送事業者にとって2024年問題への対応は、まさに生き残りのために超えなければならないハードルとなっている。
そんななかで、社会保険労務士の果たす役割はますます重要になっている。運送事業者が2024年問題に対応するためには、労働時間管理や拘束時間管理を徹底するとともに、労働時間の削減に伴うドライバーの賃金減少を防ぐこと、多額の未払賃金を請求されるような法的に問題の多い賃金制度を改善することなどをはじめとする人事労務管理制度の改定を講じることが求められる。中小事業者が大半の運送業界では、自社での対応が困難な場合が多く、労務管理などに関する知見を持った社会保険労務士がその対応を援助することが強く求められているものと考える。
社会保険労務士法人 NACマネジメント研究所 代表社員 小林 弘和【東京】
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