【主張】女性活用策は全体像を踏まえて
内閣府は企業における女性の登用状況などを調べ、来年1月から公表することを決めた。対象となるのは、上場企業約3600社。公表は、各社の承諾を得た上で、内閣府のホームページ上で行うのだそうだ。しかし、こういうことを次から次へと考え出すのには感心する。よほど暇な部署か官庁なのだろう。
今年4月、安倍首相はこの企画のベースというべき、女性の活躍推進について、経済界に要望した。それは①「指導的地位に女性が占める割合が2020年で30%」とする政府目標の達成に向けて、全上場企業において積極的に役員・管理職に女性を登用するとともに、役員の1人は女性とすること②育児休業等の取得を希望する社員には、子どもが3歳になるまでそれらを取得しやすいような環境を整備すること――の2点。
首相の呼び掛けに応じて、経団連が追加調査を行ったところ、好結果が出ている。
女性役員については、30.7%と3社に1社の割合で登用されており、うち3分の1の企業では、複数の女性役員が登用されているという。
育休制度には、64.1%の企業で法定を上回る実績があったと報告されている。
一方で、全国の労働局には、育休法で禁止されている不利益取扱いが年間4000件も報告されている。「妊娠を上司に告げたら、退職を勧められた」「育休を取得するのならパートになってほしい」などの嫌がらせだが、中小企業では、周囲の男性に加え、仕事量が増加するという理由で同性からも、同様の反応が続いているという。
国立社会保障・人口問題研究所の調査(第1子出産後の就業変化)によると05~09年時点で、出産退職した女性社員は、43.9%に達している。厚生労働省の平成24年度雇用均等調査によると、育休取得者は83.6%にも上っているが、前記調査で女性の全体像からみると、育休者は17.1%しかない。通常の認識では、育休は当然の権利として普及率の高い制度だが、実態は複雑である。いいたいのは上場企業レベルで効果測定するのは「木をみて森をみない」状態だということだ。