【主張】国内回帰を確かなものに

2014.12.01 【社説】

 内閣府がまとめた海外進出企業のヒアリング(本紙11月24日付1面既報)によると、日本国内事業拠点への回帰の動きが表面化しはじめたという。20年以上の長期にわたり継続してきた雇用空洞化がようやく落ち着くことになれば、アベノミクスの大きな成果の1つとみることができ、各企業はさらにこの勢いを強めていってもらいたい。

 経済統計からも国内拠点回帰の傾向がはっきりと分かる。2014年度の企業の設備投資計画をみると、海外投資(前年度比1.6%減)に一服感が生じている一方で、国内設備投資(同14.7%増)の増加テンポは徐々に高まっている。

 タイで生産していた国内市場向け炊飯器の生産を2013年に国内工場に生産移管した電気機械A社、台湾に委託していたコンピュータ生産の一部を2014年9月に国内生産子会社に移管した情報通信機械B社、さらに2016年度に停止する予定の生産設備の跡地に新たに先端技術の試験設備を建設する化学C社などが代表的である。

 国内拠点に回帰する理由として、為替による輸出採算性の改善を指摘する企業ももちろんあるが、政治的リスクや技術の漏えい、インフラの未整備などによるコスト要因も大きく影響している。

 海外での人件費コストも急上昇した。中国の製造業を例にとると、年平均の人件費は、2000年に1000ドル程度だったものが、2013年には8000ドル近くに上昇している。

 1980年代からバブル崩壊、リーマン・ショックを経て社会問題化した生産および雇用の空洞化は、とくに若年者へのしわ寄せとなって跳ね返り、人材立国を標榜する日本の将来を暗くするものだった。今回の企業ヒアリングで、国内拠点回帰がはっきりすれば、歴史的転換点といっても大げさではない。

 今後は、コンビニや外食などサービス産業の海外移転を促進して投資収益を獲得する反面で、製造業における付加価値生産性の向上を継続的に追求し収益を確実なものにして、国内拠点回帰を確かなものにしていきたい。

掲載 : 労働新聞 平成26年12月1日第2995号2面

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