【主張】精神障害者雇用義務化は拙速か

2013.03.25 【主張】
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 厚生労働省がこのほど開いた労働政策審議会障害者雇用分科会で、使用者委員が意見表明し、総意として精神障害者の雇用義務化に強く反対する方針を明確にした。

 同省が今通常国会に上程をめざす障害者雇用促進法改正案の柱は2つ。障害者に対する「合理的配慮」の提供義務化と精神障害者(統合失調症、発達障害、うつ・気分障害など)の雇用義務化である(以上本紙3月11日付け1面)。

 こういう記事の主張ほど気を遣うものはない。人権侵害であるとか、差別意識に立脚しているという批判が、必然的に生じるからだ。そこで客観的視点に立ちネットで当該障害のうち、統合失調症を中心に調べてみた。そのままお伝えするので、企業に雇用義務化することの是非を判断していただきたい。

 統合失調症=幻覚や妄想という症状が特徴的な精神疾患であり、それに伴って、人々と交流しながら、家庭や社会で生活を営む機能が障害を受け(生活の障害)、「感覚・思考・行動が病気のために歪んでいる」ことを自分で考えることが難しくなりやすい(病識の障害)、という特徴を併せ持つ。多くの精神疾患と同じように慢性の経過をたどりやすくその間、幻覚や妄想が強くなる急性期が出現する。

 新しい薬の開発と心理社会的ケアの進歩により、初発患者のほぼ半数は、完全かつ長期的な回復を期待できるようになった。以前は「精神分裂病」が正式名称だったが、「統合失調症」へ名称変更された。

 平成19年3月、文部科学省が、世間の誤解が多いことを理由に「軽度」の使用自粛を求める通達を出した発達障害や、メンタルヘルスの主役となったうつ病等々、企業が受け入れてどうせよというのだろうか。大手でも職場間の移動機会の多いサービス業や小売業では、安全配慮義務を問われるケースが増加しよう。症状が増悪して出社・休業の繰返しとなり、それが業務との相当因果関係があるとされると、労働基準法第19条の規定により解雇制限を受け、いつまでも抱え込まなければならなくなってしまう。

 使用者の総意である「強く反対」は理解して余りある。

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平成25年3月25日第2914号2面 掲載

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