【主張】優先すべき精神障害撲滅

2015.08.17 【社説】

 厚生労働省が集計した平成26年度の過労死等の労災補償状況をみると、自殺を含む精神障害への対処の必要性が格段に高まっている。社会問題化して久しい脳・心臓疾患での労災請求件数が、年々減少して700件台となったのに対し、精神障害は過去最高を更新し続けて1400件台に達し、ほぼ2倍のボリュームに拡大した。

 精神障害による労災支給決定事案(497件)を分析すると、職場内の嫌がらせ、いじめ、暴行や仕事量の大きな変化さらには1カ月80時間以上の時間外労働などを原因とするケースが圧倒的に多くなっている。増え続ける精神障害を抑え込むためには、ストレスを感じた労働者の把握と心配なく相談できる社内態勢の整備、長時間労働の抑制が先決である。

 厚労省の調べでは、メンタルヘルスケアに取り組んでいる企業割合は6割で、このうち4割は事業所内の相談態勢を整備していたが、全体からみると少数派である。労働者の相談相手のほとんどは、上司や同僚または家族や友人というのが実態である。今後は保健師など専門知識を有する相談窓口と適切な健康指導が重要となってこよう。

 長時間労働の改善もなかなか進んでいない。パートタイム労働者を除く一般労働者の年間総実労働時間は、未だ2000時間を切れずにいる。しかも、1カ月80時間以上の時間外が想定される週労働60時間以上の男性労働者は約14%もいる。週労働時間の長さを諸外国と比べると、40時間以上労働している者の割合は、日本の約6割に対して、イギリスやドイツでは約4割、フランスでは約3割だ。

 もし長時間労働を前提とした業務態勢を組んでいるならすぐに是正して、ワーク・ライフ・バランスの向上に力を注ぐべきである。改正労働安全衛生法により新設されたストレスチェック制度の的確な運用も極めて有効となってこよう。

 世界共通語となってしまった「KAROSHI」は、わが国の汚点だった。再び自殺や精神障害大国などと揶揄されぬよう、全ての企業において真剣に取り組んでほしい。

掲載 : 労働新聞 平成27年8月17日第3029号2面

あわせて読みたい

ページトップ