【主張】企業単位指導がスタート

2015.06.08 【社説】

 この6月に、改正労働安全衛生法に基づく「特別安全衛生改善計画」制度が施行された。改正安衛法といえば、「ストレスチェック制度」が関心の的だが、同計画制度も安全衛生に関する行政指導のあり方を大きく変更するものと考えられ、企業として適切な対応が必要である。

 同計画制度は、法令違反に基づく同種の重大な労働災害が、同一企業内の複数の事業場で発生した場合(3年以内)に、その企業に対し厚生労働大臣が作成を指示するものである。省令によると、この「重大な労働災害」を、死亡災害と障害等級1~7級の労働災害と定義している。同計画作成指導に従わず、労働災害発生の危険を生じさせた場合は、勧告に続き、企業名を公表する制裁規定も盛り込んだ。

 同計画制度は、実は行政指導の対象を「事業場単位」から「企業単位」に移すものとして注目されている。労働基準法や安衛法の行政指導は、これまで長年にわたって事業場単位で進められてきており、今後もこれが主流であることには変わりがないが、一つの軌道修正といっても過言ではない。

 近年、企業のグループ化が進む一方で、同一企業の事業場において同様な労働災害を繰り返し発生させるケースが、ここ3年程度で十数件あり問題視されていた。複数の事業場で同様な労働災害を発生させている場合、企業全体としての安全衛生対策に欠陥がある可能性がある。安全衛生対策を個別事業場に任せ、企業本部がタッチしないという例もあるという。企業単位で行政指導の網をかければ、事業場単位より、はるかに効率的・効果的である。

 企業側が憂慮すべきなのは、この軌道修正を契機として企業単位の行政指導が拡大する可能性を捨てきれないことだ。今回の改正では、安衛法関連法令の枠内に留めることになったが、指導上の効果が確認できれば、今後については未知数である。安衛法の枠を越えて、労働時間短縮などといった労基法関連にまで企業単位指導が広がるとも限らない。重大な関心を持って見守る必要がある。

掲載 : 労働新聞 平成27年6月8日第3020号2面

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