【主張】法科大学院と司法改革の将来性

2013.05.06 【主張】
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 平成11年6月、政府主導により、司法制度改革審議会設置法案が国会で成立し、2年間にわたる論議を経て、司法制度改革が本格的にスタートした。一連の改革のなかで、裁判員制度は候補になった場合、一定のやむを得ない事情がない限り、拒否できないとされ、企業も対応に追われたことは記憶に新しい。改革のもう1つの柱に法曹人口の増大がある。新たに設立された法科大学院を含む新司法制度合格者を平成22年頃までには、年間3000人確保することになっていた。事実、23年には目標には遠く及ばないものの2102人という過去最多の合格者が出ており、着実に法曹人口増加が進んでいる感じだが、その内容には問題が多い。これを受け、4月9日、法律の専門家で構成する政府の法曹養成制度検討会議は、合格者3000人計画を撤廃した。

 何が問題なのか。

 法曹人口増加の切り札として登場した法科大学院は、その数74も設立されたが、昨年実績をみると20校で合格率が1割に満たず、合格者ゼロという大学院もあった。16年当時の想定合格率7~8割には遠く及ばず、25.1%にとどまっている。弁護士稼業は先輩の法律事務所に「居候」して指導を受けながら給与をもらうという「イソ弁」から腕を磨いていく。それすらかなわず、今日では「ノキ弁」に甘んじている状態らしい。ノキ弁とは、固定給なしで事務所の机(軒先)を借りる独立採算型のスタイル。電話などの設備は、借りられるものの、収入は不安定でワーキングプアともいえる。日弁連によると12年からの10年間で弁護士数は約1万8000人から3万人に増えた半面、平均年間所得は1300万円が959万円に低下しているのは、質より量に頼ったせいとしているが分からぬ話でない。

 ただ、司法制度改革により全国253カ所の弁護士ゼロワン地域がほぼ解消したとか、労働審判制度はもとより、本訴でも審理期間が大幅に短縮されたというメリットが出ており、法科大学院の見直しをタテに、法曹人口増加目標の修正を行うなどは拙速過ぎよう。もっと議論が必要だ。

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平成25年5月6日第2919号2面 掲載

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