医師の働き方改革実現へ/とどろき社会保険労務士法人 代表社員 日隈 久美子

2022.05.29 【社労士プラザ】
  • list
  • クリップしました

    クリップを外しました

    これ以上クリップできません

    クリップ数が上限数の100に達しているため、クリップできませんでした。クリップ数を減らしてから再度クリップ願います。

    マイクリップ一覧へ

    申し訳ございません

    クリップの操作を受け付けることができませんでした。しばらく時間をおいてから再度お試し願います。

とどろき社会保険労務士法人 代表社員
日隈 久美子 氏

 平成21年に日本医師会の「勤務医の健康支援に関する検討委員会」が約1万人の医師を対象にアンケート調査を行った結果、大学病院や地域中核病院などに勤務する医師の6%が、長時間労働によって当直明けの外来時にヒヤリハットを常に感じている、ストレスで鬱っぽくなった、毎日消えてしまいたいという思いや希死念慮を抱くときがある――と回答している。

 医師自身の心身の健康も非常に大切であるが、医師に診療を受ける患者にとって、アンケート結果は由々しき事態である。今後も持続可能で安心安全な医療体制を提供し続けられるよう、医師の勤務環境改善が喫緊の課題となっている。

 26年10月の医療法改正に伴い、医療勤務環境改善支援センター(以下「勤改センター」)が新設され、私は設立当初から「医療労務管理アドバイザー」(以下「アドバイザー」)として、現場に赴き、勤務環境改善を支援してきた。

 最初は私の顧問先の医療機関に、より付加価値の高い提案ができるようになりたいという単純な動機で参加したが、アドバイザーとして支援を推し進めていくうちに、いつしかライフワークとなっていった。

 当時、勤務医の間では自分たちは専門職であり、「労働者」ではないという意識が蔓延していた。また多くの医療機関は労働基準法に疎く、36協定をきちんと締結せず長時間労働をさせ、その結果、多額の未払い賃金が発生していた。

 極端な医療機関だと、医師の労働時間管理もしておらず、その日出勤しているかどうかさえ把握していないところもあった。ちなみに労働基準監督署から受ける是正勧告の中でダントツで多かったのが、労働時間である。勤改センターやアドバイザーの認知度も低く、医療機関からはほとんど支援の依頼が来ず、ジレンマを抱えながら訪問支援などを行っていたのを思い出す。

 それから8年が経過。いよいよ令和6年4月から、一般の業種と同じように勤務医にも時間外労働の上限規制が適用になる。労働時間管理はおろか、在院かどうかも把握していなかった医療機関が約2年後に迫った罰則付き規制の対策にようやく本腰を入れ始めた。それに伴い、我われアドバイザーの認知度も格段に上がり、支援の依頼が次々と舞い込むようになった。支援のすそ野も広がった。今、医療機関の働き方改革に向けた意識が確実に変わってきているのが分かる。長い間諦めずに続けてきて良かった。さあ、ラストスパートをかけていこう!

とどろき社会保険労務士法人 代表社員 日隈 久美子【東京】

【webサイトはこちら】
https://www.todoroki-sr.or.jp

令和4年5月30日第3354号10面 掲載

あわせて読みたい

ページトップ
 

ご利用いただけない機能です


ご利用いただけません。