【見逃していませんか?この本】ドラマで振り返る「働く」のあり方/影山貴彦『テレビドラマでわかる平成社会風俗史』

2019.08.17 【書評】
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 バブル、大災害、事件、不況――多くの出来事があった平成の30年間を振り返る企画は数々あったが、本書では切り口をテレビドラマとした。 

 「働く」に関連することも、多くが変わった。平成後期には「働き方改革」が企業に求められるようになっている。

 そんななか平成の最後に放送が始まったのが、残業が当たり前になっているウェブ制作会社で定時に帰宅する女性を吉高由里子が演じた『わたし、定時で帰ります』だ。筆者は、「見落としてはいけないのが、主人公のキャラクターが周囲からは『周囲に染まらない、ちょっと変わった人』に映っているということ」と指摘する。確かに、所定労働時間内で仕事を終えることが当たり前の社会となれば、残業せずに帰る主人公が「ちょっと変わった人」には見られない。筆者も「本当に定時で帰る世の中が来るということは、こういったタイトルのドラマがなくなること」と記すが、大いに頷ける。

 このほか、職場のパワハラを描いたシーンがあるとして昨年話題になった『獣になれない私たち』を、非正規雇用では『ハケンの品格』や『ハケン占い師アタル』を取り上げる。

 一般的に知られていない職業を描くドラマは、「年を重ねるごとに職種が細分化し、専門性を掘り下げる傾向が顕著になった」とし、そのエポックメイキングとなったのは組織や階級といった警察の内情が盛り込まれた『踊り大捜査線』とだったと指摘する。

 本書では言及がなかったが、『労働新聞』『安全スタッフ』の読者諸兄にこの路線で馴染み深いのは平成25年放送の『ダンダリン』だろう。労働基準行政を取り締まる労働基準監督官を主人公にしたドラマで、竹内結子が主演だった。放送が働き方改革の叫ばれる今だったら、注目度はより高かったかもしれない。小職としては、6年越しの続編に期待したい。

 食のあり方、学園ドラマの変遷、朝ドラの復権など、盛り込まれた要素は多く、読み応えは抜群。「ああそういえば、あのドラマ久しぶりに見返してみようかな」――夏休みに読めば、こう思うのは間違いない。

 かげやま たかひこ、実業之日本社・1026円/1962年生まれ、早稲田大学卒。元毎日放送プロデューサー。現在は同志社女子大学メディア創造学科教授で、専門は「メディアエンターテインメント論」。著書に『テレビのゆくえ』『影山教授の教え子が泣きにくる』など。

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