読みたくなる就業規則に/アルファ社労士たなか 田中 淑子

2018.09.16 【社労士プラザ】

アルファ社労士たなか
田中 淑子 氏

 就業規則の周知義務(労働基準法106条)について、労働者が必要なときに容易に確認できる状態にあることが、「周知」の要件とされている。就業規則を金庫にしまうほか、パソコンでの閲覧に管理者のロックがあったり、閲覧理由を求めたりすることは趣旨に適っていない。

 その事業場の全労働者が就業規則の内容を容易に理解できるようにしなければならないとなっているが、それは可能なのだろうか。

 閲覧について指揮命令がないとしたら、休憩時間あるいは業務終了後の時間を利用することになる。就業規則が、難しい言葉や読みにくい漢字、意味の分からない法律用語で作成されていては、社員に伝えることを意識しているとは、とても思えない。

 就業規則の規定が労働者を拘束し、これに従うことを義務付けていることを考えると、せめて読みやすくする工夫を講じたいものだ。

 真部賀津郎氏がその著書「すごい就業規則」の中で、”ホンネ規則”として、劇画調の就業規則を発表して話題になった。それは、社長の思いを労働者にダイレクトに伝える画期的手段として映った。

 「世界の就業規則」(林迪廣訳著)によると、1959年12月にILO専門家会議が、就業規則の効力および周知方法について、「法律によって周知方法を定めるほど重要なものとし、第一に諸規定は読み易く良好な状態で保持されること。被用者となる見込みのある人が企業に入る前にそれを理解できるようにしなければならない。また、作業が行われる場所にも備え付け、被用者がそれを参考にすることができるようにしなければならない。第二に企業の管轄労務審判所(フランス:雇用契約から生ずる紛争解決のために設置された労使同数の委員から成る機関)に提出されること」などと示した。つまり、労働者が従うべき規則に彼らの注意を向けるため、コミュニケーションという側面の重要性を述べている。

 読みやすくすると同時に、印象深くなるよう映像化するほか、ラップ調のリズミカルな社長の朗読なども効果的だ。聴覚的に条文が身体のリズムに泳ぎ込むこともある。劇画以外にも工夫ができ、社長の思いが伝わる。読む、聞く、見る――伝えようとする意思が、労働者の心に一石を投じる。

 労働者の「読みたくなる」気持ちを引き寄せるのは社長自身の決断にある。踏み込んだ実利ある周知方法、手段を。

アルファ社労士たなか 田中 淑子【埼玉】

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掲載 : 労働新聞 平成30年9月17日第3177号10面

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