【見逃していませんか?この本】ゴールデンウィークは、是非寄席へ!/柳亭市馬、瀧川鯉昇、柳家花緑、古今亭菊之丞、三遊亭兼好、古今亭文菊『落語三昧! 古典落語/名作・名演・トリヴィア集』

2016.04.28 【書評】
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 現代を彩る落語家の名演を速記本形式でまとめたのが本書。特徴は、QRコードを読み込むとスマートフォンなどでその演目を聴くことができるという、目だけでなく耳でも楽しめるサービスが付いていることだ。

 収められている演目は、柳亭市馬『阿武松』、瀧川鯉昇『時そば』『芝浜』、柳家花緑『妾馬』『野晒し』、古今亭菊之丞『明烏』、三遊亭兼好『応挙の幽霊』『死神』、古今亭文菊『夢金』の9席。

 楷書体できっちりとした本寸法の古典落語が多くあるなかで光るのは、鯉昇師匠の『時そば』だろう。別題は『蕎麦処ベートーベン』で、お馴染みの古典落語が驚くような展開をみせる。今年も年初に新宿文化センターで行われた落語会で聴いたが、何度聴いても笑いが止まらない。一冬に一度は必ず師匠から聴きたい演目だが、それがQRコード越しにいつでも聴けるのだからそれだけでもこの本の値打ちはあるといえる。

 『妾馬』と『野晒し』が収録されているのは花緑師匠。師匠の『妾馬』といえば、練馬文化センター(2012年9月)での公演が私にとっては印象深く懐かしいものであり、このネタも是非読んで、聴いてほしいものだ。因みに、花緑師匠が近年力を入れる同時代落語の速記本(『柳家花緑の同時代ラクゴ集 ちょいと社会派』=著:藤井青銅)が4月21日に発売となったが、こちらの詳しい紹介は後日のお楽しみということで。

 各演目の間には、「対談・落語トリヴィア」として、兼好師匠が様ざまな落語に関するトークを繰り広げる。たとえば、1978年の落語協会分裂騒動などについても噛み砕いて分かりやすく解説。のちの立川流誕生と合わせて、「まあでも、今の時代の我々から見ると、『どの道それがなくても、多少細分化していくものだろうな』ということは思いますね」と私見を示す。

 まずはゴールデンウィーク前にこの本を手に取ってもらって落語にハマり、連休中は寄席や各地で開かれる落語会へ――。そうなってもらえれば、一落語好きとしてこれほどありがたいことはない。(M)

りゅうていいちば、たきがわりしょう、やなぎやかろく、ここんていきくのじょう、さんゆうていけんこう、ここんていぶんぎく、竹書房・972円/

カバーと本文中のイラストは、今話題の漫画『昭和元禄落語心中』の雲田はるこ。

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