【見逃していませんか?この本】落語界を舞台にした究極のリアルヒューマンドラマ!/三遊亭円丈『師匠、御乱心』

2018.05.02 【書評】
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 1986年に執筆された『御乱心』が30年以上の時を経て文庫版で帰ってきた。しかも、”騒動”の後日談や、六代目三遊亭円楽、三遊亭小遊三、夢月亭清麿の3師匠をゲストに招いて本音を語り合った鼎談などを新たに収録して――。

 ”騒動”とは1978年、著者の師匠である三遊亭円生が落語協会を飛び出して「三遊協会」の設立を図ろうとしたもの。著者が真打昇進を果たし、50日間の襲名披露興行を終えた直後の出来事だ。

 寄席に出られなくなるという絶望、師匠に憧れて入門したのに好きでいられなくなる心境、一門の中での疑心暗鬼などが生々しい。

 落語界の史実を残した一冊であるとともに、ヒューマンドラマとしても味わい深い。

 一連の出来事をサラリーマンに置き換えて考えてみたい。晴れて念願かなって入社した会社で、一通り仕事も覚え、さぁこれから…というときに、慕っていた直属の上司が会社から独立を試みようとするもあえなく失敗。部内の人間関係はぐちゃぐちゃになり、先輩社員のことを信頼できなくなる。挙句、上司とその奥さんから罵られる…。

 なんともやりきれない話である。

 そういう意味で、サラリーマンにこそお勧めしたい落語本である。

 騒動の暴露本でもなければ、落語の指南・解説本でもなく、他の落語関連書籍とは一線を画す。

 さんゆうてい えんじょう、小学館・680円/落語家。1945年愛知県名古屋市生まれ。明治大学中退後、三遊亭円生に入門。新作落語の旗手で、今なお高座に上がり続けている。

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