【主張】求人票トラブルへ対策を

2016.04.04 【社説】

 全国のハローワークに、求人票に記載された労働条件と実際の労働条件が異なるという訴えが相次いでいる。厚生労働省では、求人者への迅速な事実確認を行うなど現状把握に努めているが、防止対策を強化しなければならない時期に来ている。

 厚労省の集計によると、求人票と実際の労働条件が異なるとした相談は、年間1万2000件に上るという。そのうち3割以上が実際に労働条件に食い違いがあった。

 立場の弱い求職者からすると、希望に満ちていたはずの職業生活が台無しになりかねない深刻な事態に追い込まれる。一億総活躍社会の実現をめざすというなら、まず職業生活の入口から厳しく正さなければならないのは当然であり、過去には国会でも取り上げられた。

 もちろん厚労省も手をこまねいているわけではない。求人票との食い違いがこのまま拡大すれば、ハローワーク自体の信頼が揺らぎかねない。

 求人票受理時において求人企業への確認を徹底したり、労働基準行政との連携強化による指導を強めている。ハローワーク求人ホットラインを設置して求職者からの情報提供にも応じている。

 職業安定法では、第5条の3第2項に労働条件の明示義務が課されているほか、第65条第8号において虚偽求人を提示した職業紹介事業者に対する罰則(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)を定めている。しかし、この罰則は求人企業には適用されず、行政指導を超える強い対応を行うための根拠規定は整備されていない。

 求人企業の立場から考えると、賃金見込額と確定賃金額が異なる可能性が皆無とはいえない。見込額との差額を請求した裁判例ではこれを否定したケースがあり、求人票との食い違いがあっても全て非難するわけにいかない。

 様ざまな事情を考慮に入れると、求人企業に対する新たなペナルティーを軽々に科すことはできないが、これまで以上の強い姿勢で食い違いの是正に臨む必要があるのは確かである。せっかく伸びてきた求人意欲を削がないことが条件となろう。

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掲載 : 労働新聞 平成28年4月4日第3059号2面

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