【主張】賃上げに向け政策転換を

2018.01.29 【社説】

 本紙が賃金問題の解説をお願いしているプライムコンサルタントの菊谷寛之代表と賃金システム研究所の赤津雅彦代表の両先生が今春の賃上げ予測を発表した(本紙1月15日号1面掲載)。賃上げ予測は、「2.2~2.3%程度」「2%超」といった控えめな数値となった。昨年の厚生労働省集計による賃上げ率は2.11%で、これを上回ったとしてもわずかである可能性がある。

 周知の通り安倍総理は「賃上げ率3%」を要請、連合も「4%基準」を打ち出している。しかし、予想通りとなれば、昨年の賃上げ率をわずかに上回るものの、3%には遠く及ばない結果になる。消費を拡大し、消費税増税を乗り切らなければないのに、極めて心許ない。

 賃金引上げがままならない要因としていくつか指摘できるが、総理主導の官製春闘が5年目になることを考えると、要請中心では経営者のマインドは容易に改善されないことが明らかとなった。賃上げをせざるを得ない状況を形成する必要が生じているのであり、そのためにさらに思い切った経済政策の必要性が現実のものとなっている。

 アベノミクスにおいて、様ざまな賃金引上げ対策が継続的に進められてきたが、十分な効果が上がらず、わが国の経済好循環を寸断する最大の要因となっている。経営者への要請や優遇税制の実施、助成金支給、最低賃金引上げなど小手先の対策では実効性に欠けることは明白である。

 重要となるのは、雇用情勢をもう一押し改善させるための金融・財政政策の積極化だろう。失業率や求人倍率などの雇用情勢を示す数値は、ここ数年でV字回復したとみていいが、労働市場への新規参入者の拡大などにより労働力需給のひっ迫感が進んでいない。人手不足が叫ばれているものの、賃金引上げに結び付かないという事態は、まだまだ参入者が控えているためと観測できるのだ。

 いまここで雇用情勢を後退させたら従来までの取組みが水泡に帰す恐れがある。政府は、賃金引上げに向け、消極的な金融・財政政策を転換すべきである。

掲載 : 労働新聞 平成30年1月29日第3146号2面

あわせて読みたい

ページトップ