【主張】気になる最賃上昇の展望

2022.09.01 【主張】
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 47都道府県の地域別最低賃金の答申が出揃った。A~Dランクのうち最も低いDランクにおいて、福島を除く全15県で目安の引上げ額を上回っている。現状で最も低い高知と沖縄(ともに820円)を含む計5県では、目安を3円超える33円の引上げが行われる見込みとなった。

 中央最低賃金審議会が示した目安額では、A~Bランクは31円、C~Dランクでは1円低い30円と差を付けていたが、むしろ低ランクの地域ほど最賃が伸びる。たとえば、福岡以外はDランクのみの九州地方では、目安どおりの福岡が30円増であるのに対し、他県では軒並み32~33円引き上げられる。

 多くの地方最賃審においては、使用者側委員がこぞって反対するなか、採決により引上げ額が決まっている。連合の中央執行委員会でなされた報告によれば、全会一致で決まったのはわずか9地域(1府8県)に過ぎない。昨年の4地域に比べれば増えたものの、Dランクに限れば全会一致は目安どおりの福島のみ。刑事罰の基準にもなる法定最賃が、合意形成に至らぬまま決まるのは残念としかいいようがない。

 Dランクが軒並み目安超えとなった背景には、労働者側の「地域間格差が隣県や都市部への労働力流出の一因となっている」との認識がある。「誰もが時給1000円」をめざす連合は、中央最賃審でも最高額(1041円)と最低額(820円)の「額差」改善につながる目安を示すべきと主張していた。1円の差を埋めない限り、額差は当然広がってしまう。

 諸外国では国内一律の最賃を定めるケースは多く、日本でも全国一律化を望む意見は労働者側に限らずみられる。ただし、現状の地域間格差は最大で200円を超えており、早急な実現は難しい。

 一方、改定の影響を直接受ける者の割合を示す影響率は、昨年すでに16.2%に達した。大幅アップに毎年身構えざるを得ない状況は、企業に大きな負担を強いている。全国加重平均で1000円以上の達成が視野に入るなか、長期的な展望についても双方の協議が必要ではないか。

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令和4年9月5日第3367号2面 掲載

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