顧客に学び手腕磨く/京阪奈社会保険労務士事務所 武居 利記
社会保険労務士として独立開業してから6年目を迎えようとしている。コネやつてはなく、顧客も全くゼロという無謀極まりないスタートからようやく辿り着いた年数だ。しかし、その道のりの大半は行政のお手伝いをしながらであり、自慢できたものではないが、今ではおかげさまで従業員数が1000人を超える企業までお付き合いできるようになった。
これまでに痛感したことは、社会保険労務士は知識があれば良いが、その仕事は知識だけではままならず、知識や知恵、経験をどのように伝えるかという手腕が問われるということだ。老練の強者であればそのようなことはないかもしれないが、30代という若輩には知識は新鮮であっても知恵や経験では悩まされた。
我われの顧客の多くは中小企業の経営者である。彼らの多くは決して法律を無視しようと考えているわけではない。ただ知らない場合がほとんどである。従業員を雇う際に労働条件を通知しなければならないという当たり前のことであっても、「お互いが了解していたらいいじゃないか」という理論に基づいている場合が往々にしてある。ブラック企業のレッテルを自ら望む経営者は数えるほどだろう。うすうす気が付いていたとしても、どうすれば良いかが分からないのだ。
相談を受けた際、社会保険労務士は適正に答える必要がある。しかし、この答え方が難しい。まさに手腕である。開業間もないころは、まずい事案があれば「それは法律違反です!」と某局のテレビドラマのようによく顧客に直球を投げていた。それも、打ちにくい内角低めにズバッと!
顧客がそれをうまく打ち返すことはなかなか難しい。にもかかわらず、打ち返してこなければ、お付き合いできないと自ら顧問契約を辞退したこともあった。今思えばなぜ打ち返しやすい球を投げなかったのかが悔やまれる。
我われの仕事は少しずつでも顧客がレベルアップしていくことにその意義があると考える。答え方や伝え方など様ざまな要素が誘因となって顧客は成長する。手腕次第である。その手腕は自身の能力だけでは培われない。顧客から学ぶことは思っていた以上に多い。
京阪奈社会保険労務士事務所 武居 利記【大阪】
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