【主張】管理職研修で介護両立へ
厚生労働省は、改正育児・介護休業法が4月に施行されたことなどを受けて、介護離職防止に向けた取組みの留意点を示す「実務的な支援ツール」の作成を進めている(関連記事)。
このほど示した素案では、改正法が事業主に義務付けた「雇用環境整備措置」を両立支援の取組みの「ステップ1」に位置付けた。介護休業など両立支援制度の存在を知らずに労働者が離職する事態を防ぐためには、同措置のなかでも、「労働者への研修」にはぜひ取り組みたい。とくに管理職については、支援制度の利用を申出しやすい雰囲気づくりのキーマンであるだけでなく、年齢的にも自身が介護の問題に直面する可能性が高く、研修が欠かせまい。
総務省が5年おきに実施する就業構造基本調査(令和4年)によると、介護や看護を理由とした離職者は年間10.6万人に達する。女性の方が多いものの、近年は男性の比率が上昇傾向にある。介護の問題に直面するのは主に45歳以降であり、管理職など、企業の中核を担う立場にあるケースも珍しくない。団塊の世代の全員がすでに後期高齢者となっているため、団塊ジュニア世代が遠からず介護の問題に直面する可能性もある。そのときに、次々と離職する事態に陥れば、企業が受ける影響は計り知れないだろう。
改正法では、支援制度を利用しやすい雇用環境整備のほか、介護に直面した労働者が申出をした場合の個別周知・意向確認、介護に直面する前(40歳時点)の情報提供を義務付けた。雇用環境整備としては、研修の実施、相談窓口設置、取得事例の収集・提供、取得促進に関する企業の方針の周知――から1つを講じなければならない。両立に向けて労働者の意識を高め、両立支援制度それぞれの内容や趣旨を確実に理解してもらう観点から、研修には取り組んでもらいたい。
40歳時点の情報提供も、労働者の意識を高める効果が期待できる。改正法施行時に41歳以上の者は情報提供義務の対象にはならないが、何らかの形で、支援制度の内容や、利用を希望する時の申出先、介護保険制度などに関する情報を伝えたい。