【書方箋 この本、効キマス 大矢 博子選集(2023年下半期)】『うどん陣営の受難』『家康、江戸を建てる』『役職定年』ほか

2023.12.31 【書評】
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労働新聞で好評連載中の書評欄『書方箋 この本、効キマス』から、2023年の下半期に公開した大矢博子さんご執筆のコラムをまとめてご紹介します。

『黄金比の縁』 石田 夏穂 著
30年ほど昔の話だが、同期の結婚式で、学生時代の仲間が卒業から5年ぶりに集まったことがある。それぞれの近況報告で盛り上がるなか、一同を大いに驚かせたのは、ある企業の人事部で採用担当をしていると言った友人だった。

石田 夏穂 著、集英社 刊、1650円税込


『うどん陣営の受難』 津村 記久子 著
飄々とした職場小説を書かせたら当代一、と私が思っているのが津村記久子である。たとえば『とにかくうちに帰ります』という短編集には、他人のデスクのペンを気軽に借りては返さない人、インフルエンザなのに「自分がいなければ」などと言って出勤して(実はいなくても困らない)周囲を感染させる人などがシニカルに描かれ、にやにやしてしまう。

津村記久子著、U―NEXT刊、税込990円


『陰の季節』 横山 秀夫 著
大沢在昌の『新宿鮫』や今野敏の『隠蔽捜査』から長岡弘樹『教場』に至るまで、今も昔も警察小説は人気のジャンルだ。ドラマ化されたものも多い。そんななか、出版当時は警察小説の新規軸といわれ、その後のジャンルの一大潮流を作ったのが1998年に出た横山秀夫の短編集『陰の季節』である。

横山 秀夫 著、文春文庫 刊、税込660円


『家康、江戸を建てる』 門井 慶喜 著
大河ドラマ『どうする家康』が佳境だ。太閤秀吉が亡くなり、老齢の家康がいよいよ天下取りに乗り出すところまで来た。その少し前、10月1日放送の第37回に興味深い場面があった。

門井慶喜著、祥伝社文庫刊、税込946円


『役職定年』 荒木 源 著
タイトルの「役職定年」とはご存知の通り、一定の年齢で役職を退くことを言う。1980年代後半から少しずつ取り入れられた制度で、狙いは人件費の高騰を抑止すること、そして組織の新陳代謝と若手のモチベーションアップだ。

荒木 源著、角川文庫刊、税込814円


『清算』 伊岡 瞬 著
明日、会社がなくなる。そんなショッキングな帯文がつけられた『清算』は解散が決まった会社で総務部長が巻き込まれる企業サスペンスである。舞台となるのは大手新聞社の系列会社である広告代理店・八千代アドバンス。時代は、作中に「一年前のリーマンショック」とあるので2009年だろう。

伊岡瞬著、KADOKAWA刊、1925円

2023年上半期は、こちら


書評家 大矢 博子 氏

選者:書評家 大矢 博子(おおや ひろこ)
88年、民間気象会社に入社。96年に退職後、書評家に。著書に『歴史・時代小説 縦横無尽の読みくらべガイド』(文春文庫)など。

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