【本棚を探索 書評家・大矢 博子選集(2022年上半期)】『同志少女よ、敵を撃て』『弊社は買収されました!』『ラブカは静かに弓を持つ』ほか

2022.08.14 【書評】
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労働新聞で好評連載中の書評欄『本棚を探索』から、2022年の上半期に公開した大矢博子さんご執筆のコラムをまとめてご紹介します。

『会社を綴る人』朱野 帰子 著
職場のペーパーレス化、という言葉もすっかり定着した。とくにリモートワークが増えると否応なく文書はデータ化されるわけだが、いやいや、やっぱり重要なことは紙でないと、という考えも根強い。だが大事なのは紙か電子かではなく、それで何を伝えるかである。

朱野帰子著、双葉社刊、1540円税込


『ともにがんばりましょう』塩田 武士 著
企業小説やお仕事小説は多いけれど、この切り口はかなり珍しいのではないだろうか。塩田武士『ともにがんばりましょう』のテーマは、労使交渉だ。グリコ・森永事件を題材にした『罪の声』や、出版界の光と闇を描いた『騙し絵の牙』など硬派な社会派小説の書き手というイメージが強い著者だが、本書は新聞社の労働組合とその労使交渉の様子をユーモラスに綴ったもの。

塩田武士著、講談社文庫刊、814円税込


『同志少女よ、敵を撃て』逢坂 冬馬 著
昨年11月に刊行された逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』は、発売直後から大きな評判を呼んだ。新人のデビュー作であるにもかかわらず、刊行からわずか1カ月後には直木賞候補に選ばれるなど、昨年末から今年はじめにかけて出版界の台風の目であったことは間違いない。

逢坂冬馬著、早川書房刊、2090円税込


『弊社は買収されました!』額賀 澪 著
のっけからドキッとするようなタイトルで申し訳ない。だが2021年のM&Aの件数はリーマン・ショック後の最多を記録、「うちは関係ない」なんて保証はどこにもないのだ。買収といえば高杉良や池井戸潤など、経営陣の戦いを描いた硬派な企業小説が思い浮かぶだろう。だが額賀澪『弊社は買収されました!』はそれらとはかなり趣が異なる。

額賀澪著、実業之日本社刊、1760円税込


『ラブカは静かに弓を持つ』安壇 美緒 著
1999年の著作権法改正に基づき、音楽教室で使われる楽曲から著作権料を徴収するという日本音楽著作権協会(JASRAC)の方針に対して、ヤマハ音楽振興会を中心とした「音楽教育を守る会」が反発して2017年に提訴。ネットでも大きな炎上騒ぎになったのをご記憶の方も多いだろう。

安壇美緒、集英社刊、1760円税込


『炎環』永井 路子 著
鎌倉幕府草創期を描く大河ドラマ『鎌倉殿の13人』も折り返し地点を迎えた。主人公は小栗旬演じる北条義時だが、武家の中枢にいる源氏の人々や多くの御家人など、群像劇の要素もあり実に見応えがある。それにしてもこの時代の権力争いは、戦国時代の国盗りとも、幕末の動乱とも違う。

永井路子、文春文庫刊、748円税込


書評家 大矢 博子 氏

選者:書評家 大矢 博子(おおや ひろこ)
88年、民間気象会社に入社。96年に退職後、書評家に。著書に『歴史・時代小説 縦横無尽の読みくらべガイド』(文春文庫)など。

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