【主張】中小運送業の衰退を防げ

2015.06.22 【社説】

 国土交通省と厚生労働省は、トラック運送のドライバーの長時間労働を抑制するため、関係機関・企業の代表者25人による中央協議会を設置した(本紙6月8日付け1面既報)。協議会の場では、様ざまな立場からドライバーの時短の必要性が表明され、一致した方向性が打ち出されたと受け止めることができ、高く評価したい。

 多くの一般国民を巻き込みかねない交通事故の主要な発生要因となっている過労運転は、もともと撲滅しなければならない対象だった。同協議会の委員全員が、今回の労働基準法改正を、過労運転撲滅に向けた「絶好の機会」と前向きに捉えて各種対策に取り組もうとしている。

 委員の顔ぶれをみても、オールジャパン態勢と考えて差し支えない。とくに、荷主側からトヨタ自動車や三菱商事など、日本を代表する企業の担当部長クラスが参画し、時短協力に向けた明確な意思表示があった。本紙では、以前から荷主を巻き込んだ時短に取り組み、成果を出さなければならない時期に来たと主張してきた。今度こそ、目に見える好結果を期待したい。

 現行の労働基準法では、月60時間超の時間外労働の割増率を「50%以上」にしなければならないとしているが、中小企業に限り適用を猶予している。今国会に上程中の同法改正案では、平成31年4月にこの猶予措置を廃止する予定としている。

 月60時間超のドライバーがめだつ現状のまま猶予期間が終了することになれば、もともと赤字企業が多い中小トラック運送業にとって、さらに人件費コスト増となり大きな痛手となりかねない。直接的には、この猶予措置の廃止に対処するための協議会であるが、実は痛手となるのは運送業界に留まらない。

 荷主側が配慮すべきは次の点である。eコマースの普及などにより、今やトラック運送による物流網の拡充は欠かせない要素となった。その多くを担う中小運送業が、労基法改正により衰退するようなことになれば、そのダメージは日本の産業全体に及び、国際競争力の減退にもつながりかねない。

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掲載 : 労働新聞 平成27年6月22日第3022号2面

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