【主張】若者を守る視点へ方向転換せよ

2013.02.04 【社説】

 労働政策は、緩和から規制に急ピッチで方向転換をしているが、今年4月1日から施行される改正高年齢者雇用安定法ほど企業の評判の悪いものはない。総額人件費管理の観点から65歳までの希望者全員雇用を確保するためには、新規学卒者の雇用を抑制するしかない、というのがその理由である。

 毎年、大卒者の場合は8~10万人の積残しが出ており、「3年新卒扱い」という珍案も日本学術会議から提議された。行政も呼応して、それなりの効果も上がったが、さらなる積残しに耐えられる財源はなかろう。経団連では、定年後の再雇用者に働きがいある賃金を支給するためには、未だ不透明ながら40歳代や50歳代の賃金を抑える必要があるとの見解を示している向きも多い。

 となると、親はベースダウン、子は、未就職のために非正規労働に従事して糊口をしのぐ家庭が増加し、改正高年法の年金無収入者救済より、家計収入を圧迫する事態となる。若者の雇用を犠牲にしてまで行う必要があるか、首を傾げざるを得ない。

 報道によると、フランスでは、労働法を改正し、解雇規制の緩和を図ろうとしているそうだ。社会党を母体とするオランド大統領は、「労働市場を流動化させる以外に若者の雇用を一気に増大させる術はない」と左翼政権らしくない方向性を示している。わが国でも、規制には対案としての緩和策が望まれる。

 韓国のサムスン電子が、1月8日発表した12年12月期連結決算の予想値は、前期比86%増となり、日本円換算で約2兆3200億円になるという。わが国の電機最大手の日立製作所の13年3月期見通しは、4800億円だからその5倍に当たる。かつて世界市場を席巻したわが国業界から、定年やヘッドハンティングでサムスンに優秀な技術者が流れたのが一因と指摘する向きもある。経団連の中年層賃金抑制によって、こうした傾向に拍車がかかるのを恐れる。すべて「老人を守る」という基本姿勢から出たツケである。今、その支払いを請求されている産業界の奮起を期待したい。

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掲載 : 労働新聞 平成25年2月4日第2907号2面

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