コンピテンシーで残業減/福島社会保険労務士事務所 共同代表 福島公夫

2017.05.28 【社労士プラザ】

 政府の働き方改革の「残業上限規制」は、今後の労務管理の主要課題になるだろう。

 とくに、罰則付きで、休日労働時間も含めての残業時間の上限規制が法制化されれば、企業にとって大変高いハードルになる。

 さて、残業時間削減の大きなツールになるのはコンピテンシーだと考えている。

 私は、15年ほど前から、コンピテンシーを労務管理の基本ツールと考え、今でも企業の労務指導に活かしている。

 しかし、最近コンピテンシーを知らない方もいるので、その概要を説明しておきたい。

 コンピテンシーは1970年代に、ハーバード大学の心理学者・マクレランド教授が、若手外交官で業績を上げている人の行動を調査したのが始まりである。業績を上げる外交官は、学歴や知能には関係なく、共通して「人脈を知り構築するのが早い」、「嫌な相手でも人間性を尊重して話し合う」などの共通的行動があることが分かった。その後、ビジネスマンで仕事ができる人のコンピテンシーが研究され、一般企業に普及した。

 日本でも、外資系企業をはじめ多くの企業が自社の「高業績を上げている社員の行動特性」をコンピテンシーとして、人事評価基準や教育訓練に採り入れている。

 ここで、残業対応の本題に戻ると、社員の中には、イレギュラーな対応が必要なことがあっても所定労働時間内に終了できる社員がいる。逆に対応できずに残業になる社員もいる。

 イレギュラーなことに対応しても所定労働時間を超えない社員には、何か行動特性があるはずだ。その特性を明らかにして、社内で共有する。コンピテンシーの手法だ。

 最近、当事務所では、農業法人にもコンピテンシーを提案している。野菜栽培の経営者に「御社で仕事ができる人の共通的行動は何か」と聞くと、「農場を手ぶらで歩かない」との答え。要するに、仕事ができる人は、何か一緒にできることはないかを常に考えるので、手ぶらで歩くことが極めて少ないという。当然、残業も少ない。

 このことを、製造業の経営者に話すと、「うちの工場も同じだよ」との返事。その工場では、階段の手すりに雑巾を掛けておき、手ぶらで昇り降りする社員はペナルティーで手すりを拭くのだという。

 個々の社員の行動の質を高めて、残業を減らす。今こそコンピテンシーの出番ではないだろうか。

福島社会保険労務士事務所 共同代表 福島公夫【長野】

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掲載 : 労働新聞 平成29年5月22日3113号10面

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