この時期に思うこと/プラセール社会保険労務士法人 共同代表社員 朝倉 成夫

2017.02.19 【社労士プラザ】

 社労士事務所は1年のうちで最も忙しい時期となる。通常業務に加え、年末調整の作業が付加されることが主な理由である。

 年末調整とは「その年の給与・賞与所得の合計額から各種控除を調整のうえ年税額を確定し、毎月の給与等から源泉徴収された税額累計との差額を求める作業」をいう。即ち、給与等から源泉徴収され、納付済の税額累計が年税額に満たなければ差額が徴収され、多ければ還付されるという仕組みである。

 この作業は事業主が行うこととされており、従業者は「扶養控除申告書」と「保険料控除申告書」を事業主に提出することで足りる。要は、従業者は自身の税額計算を事業主に丸投げし、その結果、還付されると喜び、追加徴収されると悲しくなるという構図となっている。毎月の給与明細書を渡されても封も開けない方も多く、ましてや自分がいくら税金を納めたということに関しては極めて無頓着になっておられるのではないだろうか。

 私は定年まで銀行で過ごしたが、40歳代前半に大蔵省(現財務省)管轄の社団法人に2年間出向した。その社団法人はいわゆる、事務次官の天下り待機ポストであったため、多くの同省幹部とお付き合いをさせていただいた。

 そのときの興味深い話の一つに、主税局の方の話であったと記憶しているが、「勤め人の給与は、会社の担当者が正確に税額を計算、源泉徴収し、納期には納付してくれる。この作業は会社にとっては負担だが、翻って、国としてはこの上ない徴税方法である。

 ただ、納税者の納税意識は希薄になり、税の使われ方にも無関心となる。結果、選挙にも行かない。ゆえに、日本では本当の民主主義が育ちにくい」というものであった。当時の私は頭では理解したつもりであったが、今の仕事に従事し、腑に落ちた。

 米国では年末調整の制度はなく、従業者もおしなべて確定申告をする。民主主義が成熟すると、今回の米国大統領選挙のごとき現象が起こるのであろう。

 税と同様に、労働・社会保険においても、会社に多大な作業と経済的負担が強いられている。先進国の中で日本の労働生産性が低位に甘んじているのには、恐らくこのような土壌も一役買っているのだろう。

 法律・制度がより煩雑になることは、会社の外部委託選好を刺激し、我われ社労士には追い風となるのだが。

 天に唾するようなことを記してしまった。

プラセール社会保険労務士法人 共同代表社員 朝倉 成夫【東京】

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掲載 : 労働新聞 平成29年2月13日第3100号10面

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