治療との両立へ相談対応/酒井春江労務管理事務所 所長 酒井 春江

2020.02.09 【社労士プラザ】
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酒井春江労務管理事務所 所長 酒井 春江 氏

 厚生労働省の提唱する働き方改革の中に「治療と就労の両立支援」がある。私は昨年まで、メンタルヘルス事業と治療と就労の両立支援事業の相談員を兼務していた。病院の相談窓口担当のある日、若い女性ががん宣告され、将来への不安から心の不調を起こしての相談があった。彼女の話をゆっくり聞いた後、「がん宣告を受けたことで心の不調を起こした方からの相談は他にもある」「家族が同居し支援している」「治療も相談室訪問も姉が同行している」など、現状におけるプラス要素を拾い上げ、理解してもらった。彼女の緊張した気持ちは和らぎ、落ち着いた。

 相談員は、患者さんの辛さや心の痛みに寄り添いながらも事実を受け入れ、相談者の頭の中のモヤモヤを整理する手伝いをし、希望を尊重しながら、専門的な知識や情報をもとに選択肢を提供することが仕事である。彼女の悩みは、仕事が生きがいで退職したくないが、退職勧奨や周囲の特別な目への不安から、会社にどのように話せば良いのか分からない、というものだった。

 詳細は割愛するが、「事業所における治療と職業生活の両立支援ガイドライン」(厚労省)に沿って、支援機関の紹介や、職場、医師、本人の三者での情報交換について説明を行った。

 当該ガイドライン(平成31年4月改訂)によると、生涯でがんに罹患する割合は男女とも2分の1と推計している。

 現在、がん患者の半数近くが在職中だが、依願退職または解雇などで退職した人は3分の1以上である。私がとくに問題と感じるのは退職時期である。退職者の中で、診断確定時が3分の1、診断から最初の治療までの間が1割近く、合計すると治療が始まる前に4割の方が退職しているという事実である。

 医学と技術の進歩により、5年生存率は急激に高まり、入院日数も早いスピードで短縮されてきた。今後は、治療期間の長さに注目していく必要がある。こうなると「完全に治ってから復帰」は非現実的である。年次有給休暇の取得方法、傷病手当金申請、多様な働き方、完全復帰前の試し勤務制度の導入、時には労働契約の見直しが必要となる場合もある。取り組める範囲は個々の企業で異なる。これを可視化することは、がんのみならず病気を抱えながら働く従業員にとって安心材料になる。

 我われ社労士の目的は、「事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資する」ことである。相談対応業務においても社会からの期待に応えられるようさらなる資質向上に努めなければならない。

酒井春江労務管理事務所 所長 酒井 春江【宮崎】

【連絡先はこちら】
〒880-0944 宮崎県宮崎市江南3丁目3-16
TEL:0985-52-4135
FAX:0985-52-4135

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令和2年2月10日第3244号10面 掲載

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