労使のプラスになる提案へ/菅原労務管理事務所 所長 菅原 浩

2012.03.12 【社労士プラザ】
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 私は幼い頃、社労士である父の職業が友だちに説明できず、困惑したことを記憶している。小学4年生の時どんな職業なのか聞いてみると、父は「漢方薬のようにじわじわ効く薬を売っている」と答えた。それからしばらく私は、父が薬屋だと説明していたのだから父の罪は重い。

 時代は変わり私も社労士になり、事務手続きが主であった社労士の業務も大きく様変わりした。近年は労務トラブルに関する相談が格段に増加している。ひとたび本屋に足を運べば「リスク回避」、「人員削減の方法」、「問題社員をクビにする方法」などの見出しであふれており、実際このような本は売れるようだ。

 社労士は就業規則だけでなく、あらゆるルールの文書化を進言し、企業防衛の重要性を訴えて企業のマニュアル化を進めていくことに使命感を感じている気配すらある。

 もちろんそれは非常に重要であり、時代の変遷に伴いその必要性が高まっていることは間違いない。しかしある側面からみれば、就業規則すら整備されていない会社がこれまで特に大きな問題もなく存在している状況は、実は素晴らしいことなのではないかと思うときがある。そこでは、使用者と労働者の信頼関係の下、心のキャッチボールが行われている場合が多い。それは近年失われた最も大きな損失ではないかと感じるのだ。

 今、世の中はシステム化と効率化をいかに図るかに重要性を見出し、これを実践できた企業が業績を伸ばす傾向にある。しかし、行き過ぎたシステム化と効率化は、企業の想像力と良心を失うことにもつながることを私たちは認識しなくてはならないと思う。

 私は相談を受けた時の是非の判断基準として、自分の子供にそれをさせてもいいかどうかを考えることにしている。

 私の提案や助言が会社の成長につながるか。社員にとってもプラスであるのか。私の子供がそこにいるとしても納得できるか。私自身の感性を重視しながらプロとしての仕事をこなしたいと考えている。

 30年前、漢方薬を売っているといった父の真意がようやく今になって少し理解できるようになった。しかし、息子に職業を説明するときには誤解を与えない別の伝え方をしようと思う。

菅原労務管理事務所 所長 菅原 浩【兵庫】

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平成24年3月12日第2864号10面 掲載

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