【主張】心配な「実質賃金」の下落

2018.03.19 【社説】

 厚生労働省がこのほど発表した毎月勤労統計調査の平成29年分結果(確報)に落胆せざるを得ない。現金給与総額はわずか0.4%の上昇に過ぎないばかりか、実質賃金は0.2%の下落となってしまった。

 経営側は、景気拡大が「いざなぎ景気」を上回る長さになり、「デフレ脱却まであと一息」(2018年経営労働政策特別委員会報告)との見解を表明しているが、このままでは画餅となりかねない。来年に予定する消費税増税が現実のものとなれば、経済、雇用は再び暗転するだろう。

 企業全体の収益は過去最高を更新し、多くの大手、中堅企業で好決算が続いている。企業の内部留保も過去最高を更新中だ。その中にあって、毎勤統計の年間集計結果は、逆の意味で驚嘆に値するものである。実質賃金を例にとると、28年にようやく0.7%上昇したのもつかの間、今回は0.2%の下落となってしまった。物価上昇率が0.6%となったためである。

 最終的な政府目標が2%のインフレ率とすると、名目賃金の上昇率はそれ以上ないと、購買力は徐々に目減りしていかざるを得ない。賃金の上昇による消費拡大とデフレ脱却をめざして「大胆な政策」を打ち出してきたはずのアベノミクスも、ここに来てとうとう限界の様相を呈している。

 日銀による異次元の金融緩和が功を奏して、壊滅的だった雇用情勢は好調を取り戻したものの、政府は次の一手に躊躇しているか、見出せないでいるのが実情のようだ。この流れをそのまま引きずり、30年の賃金上昇が29年と同じような結果となれば、消費税増税など不可能であり、仮に強行すれば政権が揺らぎかねないだろう。

 今後は発想を転換して、より大胆で大規模な金融・経済政策が必要となってくる。2月1日に29年度補正予算が成立したが、全体で2兆7000億円で小規模といわざるを得ない。肝心な賃金改善と消費拡大に結び付かないことは明らかである。せっかくここまで盛り上がった経済、雇用が一気にしぼまないよう必要な対策を実行してほしい。

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掲載 : 労働新聞 平成30年3月19日第3153号2面

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