「紛争の契機」探り解決導く/社会保険労務士法人人事AID 代表 清水 豊日
昨年11月、第8次社労士法改正が成立した。労使紛争に我われが関与する機会は増えていくことが予想されるが、ここでは司法手続きやその前段での紛争テーマと紛争の契機との関係について考えてみたい。
ほとんどの労使紛争は、割増賃金の未払いや雇用契約の存否など、労働基準法や民法(労働契約法)上の法律問題、その解釈の問題として語られる。確かにこのイシューをめぐり、法律というモノサシを使って労使どちらに正義があるかを判断することが司法手続きの本質であり、紛争の「決着」がその目的となる。しかし実際の紛争では「解決」が別の様相の問題として存在することもまた多い。
それでは、労使紛争の解決のためにはどのような視点からのアプローチが必要か。私は、以下の3つのような「紛争の契機」を探ることを心がけている。
①プライド
行動そのものに対する評価が、能力や人格などの評価と結び付いたとき、それを受け入れることは難しい。行動に対する評価は当事者間でそれほど差はなく、人は「やっちまった」と思っていることを「やっちまったな」と言われることには耐えられる。しかし「だからお前は~」と続けられたらどうだろう。またこのときの非難はあえて相手のプライドを傷つける表現になりがちだからなおさら紛争の種となりやすい。
②裏切り
「自分を理解している、助けてくれる」と信頼していた相手が、その信頼に応えてくれないと感じたとき、その「裏切られた」という感情を抑えることは容易ではない。労使関係では嫌な上司より良い上司、好きな上司との関係悪化がより深刻な事態を招くことが多い。
③疎外感
人間はひとりでは生きられない社会的な動物である。それは会社でも同じで自分は社内で疎外されていると感じたとき、人間は絶望的な感情を抱く。社会の一員として認知して欲しい、自分の絶望感を理解して欲しいと思ったとき、人はその表現方法として紛争を選ぶことがある。
これら紛争の契機の考察は、紛争当事者の本来のニーズを導き出し、本質的和解から紛争の未然防止へとつながる、本来我われ社会保険労務士が果たすべき使命のためのヒントになるものと私は考えている。
社会保険労務士法人人事AID 代表 清水 豊日【東京】
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