ニーズ高まる労務監査/社会保険労務士法人EEパートナーズ 代表 酒井 典子

社会保険労務士法人EEパートナーズ 代表 酒井 典子 氏
社労士の実務に携わって約25年になるが、この間に社労士の仕事内容は大きく変わったと思う。2000年当時、社労士の仕事といえば、まずは社員の入社・退社に関する保険手続きがメインであり、たまに現場で労働災害が起こったり、傷病手当金の請求があったりした。今ほど頻繁に精神疾患での私傷病請求はなく、複雑な育児休業の給付もなかった。現在は働き手の年齢や性別の多様化によって、社労士の基本業務である手続き自体も種類が増え、複雑化している。
社労士の仕事の範囲は大きく広がり、現在は企業以外でも活躍する場面が増えた。たとえば少し大きな総合病院では、「がん患者さんの就労支援」相談員として、患者や家族の相談を受けることが当たり前になっているし、地方自治体からの依頼で、公共の施設を管理する企業(指定管理者)の労働環境を調査することも仕事として全国に広がっている。
筆者自身の日常業務では、労務相談や労務監査といった労務業務の比重が高くなっている。とくに、会社の合併や事業譲渡の場面では、規模の大小や業種を問わず依頼が増えている。会社の再編に当たって依頼される仕事は、相手方の会社の労務管理が適正かどうかを調査する「労務監査」や、2社(またはそれ以上)の労働条件の擦合せ、社内規程の統合などだ。
これらの仕事は顧問先からの依頼が多いが、弁護士や公認会計士からスポットで依頼されることもある。
そもそも20年前、最初に労務監査を行ったのは、グリーンシートという上場手前の会社のコンサルティングで、公認会計士の仕事の一部を請け負ったのがきっかけだった。その後、顧問先の上場に際して監査法人や証券会社からの問合せに対応し、「労務監査」が身近な業務となった。
最近は、新規で受託する会社や、社長の代替わりといったタイミングで、現在の労務状況を調査してほしいという依頼がある。これは社会全体でコンプライアンス意識が高くなったことと合わせて、労務監査の認知度が一般にも広がったということだろう。
このたび、社労士法の改正法が公布され、「労務監査」が社労士の業務として正式に明文化されることとなった。実務の現場で社労士が果たしてきた実績が認められた結果であり、大変うれしく思う。同時に、働きやすい職場づくりのプロフェッショナルとしての責務を重く捉え、自分自身の知識をブラッシュアップして、会社と社員の橋渡し役となれるよう努めていきたいと考えている。
社会保険労務士法人EEパートナーズ 代表 酒井 典子【東京】
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