【主張】有期倍増でも可哀そうな研究員

2013.11.11 【社説】

 政府がめざす5つの国家戦略特区は、事実上骨抜き状態となった。とくに厚生労働省では雇用特区が取り下げられ一息ついたところである。ただし、解雇ルールの明確化など3項目は取り下げられたものの、「有期雇用を現行の最長5年から10年に延長する」ことはほぼ決まった状態となった。周知のように、雇用契約は、原則上限1年としていたのが平成10年の改正では「労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する者および満60歳以上の者は3年までに」延長され、同17年の改正では「一般職の1年が3年に」、前記改正の例外組は「3年が5年に」延長された。

 雇用期間を長きにわたって上限1年にしていたのは、「長期の労働契約をすると簡単に退職も解雇もできない、とくに退職できないことでは、人身拘束にもつながる」という大義名分にそってのこと。時代の変遷によって、今日そのような心配は皆無になったといっていい。

 「5年契約」に該当するのは、①博士の学位を有する者②自営の多い医師や弁護士、社会保険労務士などである。国家戦略特区ワーキンググループで問題になったのは、各大学に所属する博士等の研究員。今年4月1日から施行された改正労働契約法では、同日以降有期契約が5年経過した者には「無期雇用転換権」が与えられることになったが研究員の場合は、ノーベル賞受賞に輝いた山中教授のチームのように一定のプロジェクトに所属し、研究期間は5年程度が多い、ということだ。

 プロジェクトというものは非定常作業だから、「永久」に続くものではない、5年経って無期契約に転換し、当該契約大学・機関がそのまま抱え込んだのではコストパフォーマンスが崩壊してしまう。さりとて、同じ労働者なのに「終わったらさよなら」もできない。いっそ雇用労働者を離れ「業務請負」にしたら、という声も出たが、薄給に耐えてきた面々をさらなる生活苦に追い込む危険性がある。なら10年を上限とし、さらに有期の反復更新をしたらどうかなど、まとまりの無い議論が続いたらしい。いずれにせよ問題の先送りはかわいそうだ。

掲載 : 労働新聞 平成25年11月11日第2944号2面

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