【主張】労働法知識が命救う力に

2015.05.18 【社説】

 東京・亀戸労働基準監督署(佐藤範雄署長)は、パートタイム労働者に違法な長時間残業をさせた製パンチェーンの東京工場などを東京地検に書類送検した(本紙4月13日号3面既報)。

 パート労働者3人に対し、最長で月139時間に達する残業をさせた結果、そのうち1人(52歳)が勤務中において重度の脳疾患発症を余儀なくされた。パート労働者であっても過労死の危険性が高まっていることを示す事件といえる。

 労働者を半身麻痺に至らせた使用者の社会的責任は極めて重いのは当然として、一般的に正社員と比較して会社への忠誠心が乏しいはずのパート労働者が、なぜこれほどまでに悪質な使用者に従順となり、残業代も支給されない長時間残業に応じるのか…。

 政府は、国民の働くルールに関する啓蒙・啓発にもっと力を入れ、労働基準法違反がれっきとした犯罪であることを広く周知させて悲劇のリスクを軽減すべきである。

 捜査の結果、送検された製パン工場は、数々の労基法違法を重ねていた。36協定を超えた残業を強いていた以外にも、勤務データを改ざんし本来支払うべき残業代の3割程度しか支払っていなかった。その結果、合計で300万円もの残業代を浮かしていたという。

 労働者が正社員なら、会社への貢献や忠誠心から、無理をしても法違反に目をつむるという意識が生じても不思議ではない。しかし、今回被災したのはパート労働者である。会社への忠誠心から過酷な労働を受け入れていたとは考えにくい。

 要因の1つに労働法知識の乏しさがあるのではないか。59時間に及ぶ違法残業が、決して行ってはならない使用者の犯罪であるという認識が乏しい。相談や申告窓口が存在することも十分周知されていないのが実態である。

 厚生労働省や地方自治体では、国民、学生を対象とした労働法セミナー事業を展開しているが、いかんせん後手に回っている。労働法の知識が過労死の危険から命を救う一つの力となり得ることを強く認識すべきである。

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掲載 : 労働新聞 平成27年5月18日第3017号2面

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