【書方箋 この本、効キマス】第16回 『画家とモデル―宿命の出会い』中野 京子 著/とに~

2023.04.27 【書評】
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名画の秘話が次々と!

 美術って敷居が高い。美術って難しい。そう感じている人は少なくないでしょう。そして、そのように美術に苦手意識を持っている人の多くが、「美術は感じるものだ」と思い込んでいます。しかし、それは大きな間違い。小説だって映画だってドラマやアニメだって、初めてその作品を観る際には、どんな内容なのか、どんな登場人物がいるのか、どんな人が作ったのか、ある程度の事前情報を頭に入れるはず。それらを知ったうえで楽しんでいるはずです。

 美術館に飾ってある名画にもほぼ必ずと言って良いほどストーリーがあります。それは、名画に描かれたストーリーであったり、画家や注文主、所蔵者など名画そのものにまつわるストーリーであったり。それらを知ったうえで観れば、小説や映画といった他のエンタメと同じように美術も楽しめるのですが、なぜか美術に関してはノーヒントで観るのが正しいというような風潮があります。いやいや、名画を観ただけでストーリーを感じ取るだなんて、そんなことができるのはサイコメトラーくらいなもの。だから、超能力のない一般人には美術は敷居が高く、難しく感じられるのです。

 では、名画に関するストーリーはどのように得れば良いのでしょうか? 最もポピュラーな方法は、名画に添えられたキャプション(解説文)を読むこと。しかし、文章の巧拙や当たりハズレがあるので、どことは言いませんが、美術館によっては文章が頭に入って来ないことも。

 そこで、僕がオススメしたいのが、中野京子さんの本です。中野さんといえば、一見するととくに怖くはない、普通に美しい絵に隠された“恐怖”の秘密を紹介する『怖い絵』シリーズが有名ですが、ホラーが苦手な人もいらっしゃるので(かくいう僕もホラーは苦手・笑)、今回は『画家とモデル―宿命の出会い』を推したいと思います。

 紹介されているのは、ゴヤやベラスケス、シャガールといった画家と、そのモデルの秘められたストーリーの数々。絶対君主の顔色を伺いながら心の休まらない日々を過ごす宮廷画家ホルバインや、家も財産も作品もすべて差し押さえされ、まさに絵に描いたような転落人生を歩んだレンブラントの真の姿が、まるでテレビのドキュメント番組『ザ・ノンフィクション』のナレーションのように淡々と語られます。かと思えば、「生涯独身を通した肖像画家サージェントの死後30年後に公開された黒人青年のヌード画!」や「アメリカの国民的画家ワイエス、15年にわたりご近所さんと密会! 女性は描かれるたびに美しくなっていた!?」というようなスキャンダラスなトピックも多く収録されています。名画に秘められた事実は小説よりも奇なり。この本を読めば、美術が面白く感じられること請け合い。実際に名画を観たくなること間違いなしです。

 しかしまぁ、中野さんはどのようにしていつもこんな名画にまつわる面白いストーリーをみつけているのでしょう。もしかしたら、中野さんこそがサイコメトラーなのかも。

(中野 京子 著、新潮社 刊、税込1925円)

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アートテラー とに~ 氏

選者:アートテラー とに~
アートテラーは、「美術を面白おかしく紹介する職業」のことで、日本ではただ一人。83年、千葉県生まれ。ブログ「ここにしかない美術室」が人気を博す。著書に『名画たちのホンネ』など。出演番組はTBSラジオ『こねくと』ほか。

 濱口桂一郎さん、髙橋秀実さん、大矢博子さん、月替りのスペシャルゲスト――が毎週、皆様に向けてオススメの書籍を紹介します。“学び直し”や“リフレッシュ”にいかが。

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令和5年5月1日第3399号7面 掲載
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