【ひのみやぐら】災害原因はひとつではない

2017.04.11 【ひのみやぐら】
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 労働安全衛生マネジメントシステムやリスクアセスメントが普及し、ハード面での改善が進んだ現在、残る最後の課題はヒューマンエラーだという。こうした考えが影響してか、労働災害発生の多くは労働者個人のミスとして見られる向きも少なくないようだが、問題はそれほど単純ではない。労働災害は、複数の原因が重なり合ったうえで起きるもので「労働者のミス」ひとつをもって〝戦犯〟としたところで、問題解決はもとより再発防止対策にもならない。

 災害発生のメカニズムを説明するものとしては、英国の学者、ジェームス・リーズンの提唱するスイスチーズモデルが分かりやすい。スライスしたスイスチーズはところどころに穴が空いている。その穴は、それぞれ大きさも位置も違う。スイスチーズは1枚1枚が危険事象を防ぐ防御板に見立てることができる。穴の空いたチーズでも何枚か重ねることで、危険事象を通させないことが可能になる。つまり、対策を二重三重にすることで、労働災害は防げるというわけだ。

 一方で、4枚、5枚とチーズを並べても、危険事象がすべての穴を通過してしまうことがある。これが、労働災害の発生ということになる。ヒューマンエラーひとつをもって原因としてしまうことは、チーズを1枚だけ立てて、危険事象が壁にぶつかることもなく、すんなりと穴を通り抜けてしまった状態に似ている。もちろん、ケースとしてはありえないではないだろうが、この例を基準とするのは無理があるだろう。

 通常、労働災害が起こるのは、機械設備の不備、保護具の未使用、安全教育の不徹底、職場風土などさまざまあり、一概にひとつの要因を挙げることは難しい。むしろ、これらが複雑に絡み合って、事故が出現すると考えるほうが自然だ。ヒューマンエラーは、要因としては大きいかもしれないが、労働者への注意喚起のみをもって、再発防止対策とするものは、いかがなものかと思わざるを得ない。

 再発防止対策は災害の裏側にまで踏み込んだ原因究明が必要になる。どうすれば、二度と災害は起きなくなるのか――。問題意識をもって対策の確立を。

平成29年4月15日第2280号 掲載

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