【主張】自らも労働改革の発信を

2017.02.03 【社説】

 厚生労働省の有識者会議が労働政策決定プロセスの改革案を打ち出した。現行の労働政策審議会を堅持しつつも、井の中の蛙とならないよう課題によっては三者構成に捉われない労働政策基本部会(仮称)を新設して議論するという2本建て方式である。

 労働問題は良好な労使関係を前提として初めて本質的な解決が図られ職場が機能すると考えれば、政策決定プロセスにその実態を熟知する労使を交えた労政審による議論が不可欠と考えられる。

 しかし現代は、もっと幅広い視野に立った議論が求められ始めている。職場の実態を見つめることも重要だが、日本社会全体の先行きやグローバルな視点も欠かせない。既得権のバランスを調整して問題が解決したとしても、社会全体の発展の足を引っ張るようではまさに井の中の蛙である。労政審が、労使の利害調整の場と批判されないよう、この2本建て方式への改革を断行すべきである。

 身近な例を挙げると、現在、国会で審議中の高度プロフェッショナル制度は、労働基準法上の労働時間規制を外す狙いがある。一部の対象者に限って残業概念が消滅するため、労働者側にとっては既得権の侵害といってもいい。

 だが、急速に進んでいる成果主義への対応やグローバル化にとっては、乗り越えなければならない通過点の一つである。労使間の駆け引きだけに議論を矮小化していては、的確な判断ができなくなる。官邸や経済財政諮問会議からの政策提案は、おおよそが幅広い視野を有したものとなっている。法改正の技術的側面を重点に検討する労政審に頼っていては、長期的課題に対応するのは難しい。

 委員構成から考えても明らかだ。労政審で議論の運営を任されている公益委員の大多数は労働法専門家で、企業経営の実態に幅広く通じているか心許ない。改革案では、同基本部会の委員構成について、三者構成に捉われず課題に応じた高い見識を有した者に依頼する方針という。

 官邸からの一方的な政策提案を待つのではなく、大所高所から労働改革案を発信するぐらいの意気込みが欲しい。

掲載 : 労働新聞 平成29年2月6日第3099号2面

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