「現場主義」でトラブル解決/アイエス社労士事務所 所長 伊藤 悟

2012.04.02 【社労士プラザ】
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 当事務所における取扱事案として、解雇、退職勧奨、賃金引下げ、職務内容の転換といった、いわゆる民事的な内容の個別労働紛争がめだってきている。うつ病や適応障害等の精神疾患に端を発した人事対応の問題も寄せられている。

 こうした問題対応が求められたときの持論として、私は、「現場主義」、「円満解決」を掲げている。現場主義とは、トラブルの起きた現場に行ってその原因を探る、問題の当事者である従業員等との面談を行い、表情、話し方のトーン、要望、家族の状況などをつぶさに解析するなどの作業を行うことである。

 実例として、一人暮らしの男性社員が突然出勤しなくなり、失踪したケースがある。私は、会社の人事部長などに頼み込み、男性側の状況や要望・苦情などについて家族から話を聞くため、男性の実家まで事情聴取に出かけた。その際に、玄関での母親の対応をみて「実家に戻っている」と直感した。このことを会社に告げ、「今回の件は、失踪原因や賠償請求を会社に求めてくる確率がゼロに近い」と伝えた。

 男性が無事家族のもとにいるのであれば、家族が冷静になっているからである。このように現場に出向き当事者と触れ合うことで、迅速かつ的確な解決ができると感じている。

 円満解決に向けては、法律論、就業規則論を前面に押し出すのではなく、感情に配慮した対応をとることである。ある老人福祉施設の事例がある。同施設は、介護職として雇った女性パートについて、上司とそりが合わないという理由で一方的に配置転換を行い、掃除などの雑用をさせた。すると、女性は「職場のいじめで閑職に追い込まれた。精神的な苦痛を受けたので慰謝料的金銭を求めたい」とあっせんを起こしたのである。私は「問題を解決するには、金銭よりも謝罪することが重要である」と施設側を説得し、あっせんの場では「対面して謝罪させてほしい」と申し出た。そうしたところ女性は涙を流し、「この言葉がほしかった。金銭はもういい」と即日解決に至ったのである。

 法令や規則中心の杓子定規な解決をするのではなく、それぞれの置かれた立場、心の機微、感情に配慮した円満解決策の経験を積ませてもらった2つの事案であった。

アイエス社労士事務所 所長 伊藤 悟【愛知】

平成24年4月2日第2867号10面 掲載

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