日頃から「安全」を意識/あべの労務代理事務所 友田 良一

2013.02.25 【社労士プラザ】

あべの労務代理事務所
友田 良一 氏

 もう20年以上も前になるが、私は大学卒業後に民間の鉄道会社に就職した。入社直後は当然、新入社員教育を受けることになる。そこでは様ざまな業種を体験させてもらった。東京の流通施設を見学したり、コンピューター実習などを受けさせてもらった。しかし一番印象に残っているのは、基幹業である鉄道関係であり、具体的には駅務実習と車掌実習である。

 実習に先立ち、「運輸教習所」なるところで一とおりの教育を受ける。駅名を覚え、接遇用語を身につけ、駅務機器・車両搭載装置の名称と役目を理解する。そしてあらゆる所作の際には、「指差確認喚呼」を伴うよう、身につけさせられる。対象を指差しながら「○○よし」等と叫ぶ所作である。電車が駅から発車する際に、運転手や車掌が実際にされているところを目にした方も多いと思う。この所作は、これから動作を行うに当たって間違いを犯さないための一呼吸であり、ある時には、動作が正しく行われたかどうかの確認行為にもなる。こうした、何気ないながらも大事な所作を積み上げて人命が守られる。これの繰返しである。

 つい先日、中央労働災害防止協会の安全衛生教育センターで「RSTトレーナー」講習を受講した。そのなかの職長教育科目に、「異常時における措置」がある。講師が言うには、作業現場の「わずかに基準から外れた異常状態」を放置しておくと、労働災害に発展してしまうこともあるから、初期異常状態を「前兆」として見逃さず、発見・対処することが大切だ、と。これに私なりの解釈を加えて、「状態は一見何もないようにみえても、放置しておくと、突然事故発生レベルにまで悪化することがあるから、何もないうちから注意を払うことが大事」と理解した。その2日後に、笹子トンネル崩落事故が起きた時には、あまりの偶然にぞっとしたが。

 平穏な日常の中で「安全」を意識するのは、退屈で難しいものであるが、ひとたび事故が発生すれば取返しがつかないからやっかいである。鉄道業を例に挙げたが、安全を意識した所作が日頃から定着していれば、労災リスクも減るだろう。「やらされ感」を感じさせずに導入するのは簡単ではないが、有効性を大いに提唱していきたい。

あべの労務代理事務所 友田 良一【大阪】

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掲載 : 労働新聞 平成25年2月25日第2910号10面

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