【主張】24年問題の対応は道半ば
昨年、全国の労働基準監督署が実施した自動車運送業に対する監督指導状況によると、違反率は81.6%だった(本紙9月1日号1面)。法令違反が疑われ、監督指導の対象になった事業場こそ前年から17%増えているが、違反率に関してはめだった変化はみられていない。対象事業場の8割を占めるトラック運送業に限っても、違反率は同水準の81.4%だった。
懸念されてきた時間外労働の上限規制の影響は、数字からは直接うかがえない。変わらず高い違反率を示しているものの、「労働時間」関連の違反が認められた割合は42.9%となり、むしろわずかだが低下した。期待どおり長時間労働の是正が進んだ結果だとしたら、憂慮されるのはドライバーの収入への影響だ。
一般に歩合制が採用されるトラック運送やタクシーの業界では、時間外労働の削減は収入に大きく響く。とくにトラックドライバーの場合、独特の給与体系から「残業代で稼ぐ」のが当たり前とされてきた。コロナ禍においても仕事を減らされ、稼げる職場へ転職したドライバーは少なくない。上限規制の適用後も“稼ぎ頭”にきっちり報いるには、給与体系の抜本的見直しが求められる。
全日本トラック協会の24年調査によれば、ドライバーの1人1カ月平均賃金には固定給の高まりがみられた(本号8・9面)。たとえば大型ドライバーの賃金は前年比1万7900円アップしたが、うち1万4700円は歩合給や時間外手当を除く固定給の伸びとなっている。けん引や中型においても、これに近い傾向が認められた。
ただ、これら3職種では同時に時間外手当も0.7万~1.7万円増加した。固定給を賃上げしただけの企業も、少なくなかったと思われる。
国土交通省は昨年3月、時限的措置だった「標準的な運賃」を見直し、平均約8%の運賃引上げを含む改正を行った。ドライバーの労働条件を緊急に改善するために示された基準は、今も価格転嫁を促すべく機能している。法令遵守とともに担い手の維持・確保を図るには、残業代で稼ぐ仕組みの改革が期待される。