人的資本をはぐくむ/まちだ社会保険労務士事務所 町田 仁美

まちだ社会保険労務士事務所 町田 仁美 氏
近年、人的資本経営が注目されている。人材を「コスト」ではなく「組織の成長を支える大切な資本」と捉え、その価値を最大限に引き出し、企業価値を高めていくという考え方である。国の指針や国際規格も整備され、上場企業だけでなく中小企業でも、人の成長支援や働く環境づくりに力を入れる動きが広がっている。また、会社が社会から選ばれるために、一人ひとりを大切にする「ビジネスと人権」の視点も欠かせない。
私は社会保険労務士として企業顧問を務めるほか、アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)、アンガーマネジメント(怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング)、リフレーミング(物事の捉え方や解釈を変える)、アサーション(自分も相手も大切にする伝え方)、ハラスメント防止、メンタルヘルス対策などのテーマで研修に登壇している。いずれも人的資本経営の推進に欠かせないものであり、組織のリスク管理、生産性向上、エンゲージメント向上に直結するテーマである。
なかでもここ数年研修依頼が増え、重視しているのが、アンコンシャスバイアスへの対応である。採用や配置、評価、人間関係において、無意識の思い込みはしばしば不合理な判断や不公平な取扱いを生む。それは職場の不満や離職の増加、成長機会の損失につながりかねない。アンコンシャスバイアスに気付き、適切に対処する力は、人的資本をはぐくむうえで不可欠なものである。
アンガーマネジメントも重要なスキルである。怒りの感情は自然なものだが、うまく扱えないと、パワーハラスメントや職場のストレス問題を引き起こし、組織の健全性を損なうリスクが高まる。アンガーマネジメントを身に着けることで、自分と相手との違いを受け入れることができるようになり、心理的安全性を生み出し、誰もが安心して意見を出し合える風土が醸成される。
パワーハラスメントを未然に防ぎ、心理的安全性を高めるため、1年半前に電子書籍『パワハラ防止Book』を出版した。日常に取り入れやすい内容なのでぜひご一読いただきたい。
社労士として、研修講師として、知識の提供だけではなく、受講者一人ひとりに「気付き」をもたらし、行動変容を促すことをめざしている。アンコンシャスバイアスへの気付きと感情マネジメント力の向上を支援し、人的資本経営と「ビジネスと人権」を実現する組織づくりに、これからも貢献していきたい。
まちだ社会保険労務士事務所 町田 仁美【香川】
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