信頼なき雇用関係を懸念/石田社会保険労務士事務所 石田 百合子

2012.09.10 【社労士プラザ】
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 平成13年に開業登録をし、行政書士と兼業で業務を行っている。開業後しばらくして、窓口相談の業務をさせていただく機会に恵まれ、現在でも、相談に応じる機会は少なくない。

 何年か相談業務を行っていて感じることは、相談者の知識の豊富さである。以前は、法律が分からない、対処方法が分からないがどうしたらいいのかという相談が多かった。

 しかし近年の相談者は、法律や判例を非常によく勉強しており、その対処方法も知っている。その上で、不利益を被った自分は、実際の権利以上の何らかの請求ができるのか、このような不利益を与えた会社に制裁は与えられないのかという部分について相談を受けることが多くなった。

 これは、インターネットによって簡単に情報が手に入るようになったことが、原因の一つと思われる。居ながらにして、知りたいことを確認できる。その上、本来の権利以上の何かを手に入れられる可能性まで出てきたとすれば、情報社会万歳といったところだろうか。

 しかし、ネットの情報は、完全なものばかりではない。また、個々に判断しなければならない事案もあり、似たような案件でも必ずしも同様の結果になるとは限らない。自分の欲する情報、回答だけを鵜呑みにし、それを否定されると感情的になる相談者もいる。相談ではなく、自分に有利な情報を欲しているだけのように思えることがある。

 また、昨今は労働者と使用者の間に信頼関係という土台がない雇用関係が多いように思われる。自分の勤める会社に対する誇りがない労働者が増え、また使用者側も労働者を人間ではなく労働力としてしかみていないこともある。このまま、労使がお互いに「少しでも自分が利益を得よう」「自分の利益さえ守れれば相手がどうなってもいい」との考えを深めていけば、雇用関係はどんどん殺伐なものになっていくだろう。

 労働基準法第2条に「労働条件は、労働者と使用者が対等の立場において決定すべきものである」とあるが、この条文をもう一度よく読み返してみたい。対等の立場というのは、相手を尊重し、自分と同じ立場に立つ者として、認めるということである。誠実な雇用関係が増えれば、相談件数も減るのだろうか。

石田社会保険労務士事務所 石田 百合子【広島】

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平成24年9月10日第2888号10面 掲載

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