若者へ雇用契約の知識伝授/社会保険労務士野島正貴事務所 所長 野島 正貴
私の所属する広島県社会保険労務士会では、社会貢献事業の一環として学校教育に参画し、これから社会に出る高校生などを対象に雇用契約の基礎知識、医療・年金などの社会保障制度の仕組みについて出前授業を行っている。私自身常々そういった教育の必要性を感じていたので、取組みに賛同し、積極的に参加している。
社会保険労務士という職業柄、若者の離職率の高さや、ささいな労使のいさかいごとで頭を悩ませている中小企業事業主にしばしば遭遇する。その際は、問題解決に向けて、労使双方から話を聞くようにしているのだが、雇用契約に対する労働者の理解不足を感じることが少なくない。雇用契約とは、彼らが思っているよりも支配従属的であり、ある意味において窮屈な契約なのだ。
昔と比べて、雇用は家族的なつながりが薄れ、「契約」という色が強くなっている昨今、雇用契約とはいったいどのような性質のものなのか、正しく理解しておくことが、より求められる時世なのではないだろうか。
また、若者の医療・年金など社会保障制度に対する不信についても危惧するところだ。
彼らの主な情報源は、これまでの書籍や新聞といった紙媒体からインターネットへ移行している。確かにインターネットは、知りたい情報をタイムリーに取り出せるとても便利なツールだが、ややもすると情報が偏りがちである。そればかりか、最近では、ユーザーを誘導するような機能を持ち始めている。困ったことにそれはネガティブな方向へより強く働くようだ。若者たちにとって決して安くはない医療保険や年金の保険料とも相まって、インターネット上の偏った情報が保険料を支払わない口実になってしまっているのではないだろうか。
若者たちが将来「こんなはずじゃなかった」と戸惑ってしまうことがないよう、雇用契約や社会保障制度の当事者となる前の段階において、それらの正しい知識の習得に向けた教育が重要だろう。そのためには、雇用や社会保障の専門家である我われ社会保険労務士が、その大きな役割を果たしていかなければならない。
社会保険労務士野島事務所 所長 野島 正貴【広島】
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※タイトルの社名は連載時のものです。