【主張】評価したい発効日後倒し
今年度の地域別最低賃金の改定を巡り、各地で過去最大となった中央最賃審議会の引上げの「目安」(全国加重平均63円、6.0%)を上回る答申が相次いだ。
ただし、新たな最賃の発効日について、例年よりも1カ月以上遅い期日を設定した地域がある点が、昨年度とは異なっている。中小企業・小規模事業者を念頭に最賃引上げの支援策を活用するための準備などに配慮した結果といえよう。例年どおり答申からわずか2カ月弱で最大7%以上の引上げに対応するのは極めて困難だ。仮に来年度以降も大幅な引上げとなるのであれば、発効日に関する議論がさらに深まるよう期待したい。
今年度の目安に関する中賃審小委員会の公益委員見解では、各地賃審に対し、目安を十分に参酌し、地域の経済・雇用情勢に基づいて改定への自主性を発揮するよう要請。法的強制力を伴う最賃の実効性を確実に担保するため、発効日の決定に関しても十分な議論を求めた。小委員会においては、必要となる引上げ原資を確保したり、政府の支援策の利用時に求められる設備投資計画を策定したりするための経営的・時間的な余裕がない中小企業が増えているとの意見もみられた。
各地の答申では、鳥取が7.63%増の時給1030円、島根が7.38%増の1033円、石川が7.11%増の1054円など、7%以上の引上げもみられる。多くの地域が、法定どおり、答申後の異議申立てや労働局長による決定・公示に必要な期間を経て10月中に発効日を設定するなか、島根や三重(6.26%増)、奈良(6.59%増)、福岡(6.55%増)などでは、独自に答申から約3カ月を経過した11月の中下旬に設定している。
他方、東京では、発効日を来年1月や4月とするよう求める意見が出たが、結果的に反映されなかった。石川は、発効日を法定どおりとしたうえで、中賃審に対し、地域によって発効日が異なる影響について検討を求めている。来年度以降の最賃改定では、地賃審が適切な発効日を判断しやすくなるよう、中賃審から目安決定の段階で基本的な考え方を示すべきではないか。