職場変える「ケアの循環」/フローリッシュ社労士事務所 新美 智美

フローリッシュ社労士事務所
新美 智美 氏
社会保険労務士として開業して12年間、主にハラスメント防止とメンタルヘルス支援の分野を中心に活動してきた。いずれも、働きやすい職場づくりに欠かせないテーマであり、やりがいを感じつつ取り組んでいる。
一方、近年とくに気になっているのが、こうしたテーマが管理職の大きな負担になっている現状である。昨年刊行された『罰ゲーム化する管理職』という書籍が話題となったことからも、管理職に課せられる責任や期待の重さが、広く社会に認識されつつあることがうかがえる。
実際に、ハラスメントの相談対応において、加害者とされる管理職と面談することもあるが、その中には会社のために自己犠牲的に働き続けてきた人も多く見受けられる。組織に尽くしてきた姿勢が、時に「ハラスメント」という形で否定されてしまう現実に、本人も深く傷付いていることが少なくない。
こうした管理職の姿に触れるたび、「支える側こそが、まず支えられるべきではないか」という問いが浮かぶ。
医療福祉の分野では、「支援する人自身がケアされることの重要性」についてたびたび指摘されているが、この考え方は管理職にも十分当てはまるだろう。部下の話に耳を傾け、職場環境を整える役割を担う管理職自身が、まずケアされる存在でなければ、周囲に目を配る余裕を持ち続けることは難しい。
ここでいう「ケア」とは、知識やスキルを伝える支援と、気持ちに寄り添う支えの両方を指す。継続的にこうしたケアを届けられるのは、企業内ではやはり経営層や人事担当者だろう。
しかし彼らもまた、経営と現場で働く社員の間で葛藤を抱えながら、多忙な日々の中で職場全体を支えている。自らのケアは後回しになりがちだ。
では、その経営層や人事担当者を誰がケアするのか──私は、それが社会保険労務士の役割だと考えている。外部から継続的かつ中立的にかかわる立場として、実務支援に留まらず、難しい立場にある方々の声に丁寧に耳を傾け、必要なサポートを行うことも、私たちの果たすべき役割だと感じている。
まだ十分に応えられているとはいえないが、必要性を強く感じているからこそ、これからも寄り添い、支える役割を果たしていきたい。
ケアの循環が、働くすべての人にとって優しい職場づくりにつながるように。そんな願いを込めて、微力ながら尽力していきたい。
フローリッシュ社労士事務所 新美 智美【愛知】
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