【主張】伸びぬ賃金こそ罰ゲーム

2025.06.05 【主張】
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 就職氷河期世代の“10年後の姿”は、軒並み実質でマイナスだった――。中央労働委員会が大企業を対象に毎年実施している「賃金事情等総合調査」で、伸び悩む大卒中高年層の賃金実態が明らかになった。昨年6月時点のモデル賃金を10年前の結果と比較すると、45歳以上は軒並み物価上昇分を上回る伸びをみせていない。55歳に至っては0.1%減少し、名目でもマイナスだった。

 同調査によれば大卒・総合職のモデル賃金は、前年比では軒並み改善した。たとえば22歳は7.1%増の25.7万円となり、喧伝される初任給の高騰が有力企業のトレンドであるのが分かる。中高年層では45歳、50歳で3~4%台の伸びを示したほか、55歳も1.0%増と改善している。

 ただ、10年前の2015年調査の結果と比べると、様相は随分変わってくる。若年層では22歳が17.3%増、25歳が14.4%増と大幅に改善してきたのに対し、中高年層の低調さは目を覆いたくなるばかり。45歳は2.5%増に留まり、50歳の1.2%増とともに“実質賃金”としては減少していることが分かる。さらに55歳は0.1%減、60歳は4.0%減で、名目でも下がっている。

 こうした結果から浮かび上がる構図は、いわゆる就職氷河期世代の“夢もかけらもない現実”だろう。たとえば10年前の40歳(47.2万円)は10年後に50歳(61.6万円)となり、理論上は約14万円昇給したとみなせる。ただし、それは昇進・昇格の影響であり、“実質賃金”としては10年前の50歳(60.9万円)より低い。当時の氷河期世代からみれば、大企業に“就社”した勝ち組ですら、“10年後の未来”は先輩たちを下回る月給だったことになる。

 現在の極端な初任給引上げと賃金改善の背景に、こうした不遇な世代がいることを忘れてはならない。若い世代から管理職が罰ゲームと目されるのは必然で、周到な企業ほど、同時に管理職の賃金も着実にテコ入れしている。目先の募集賃金や再雇用者賃金の改善ばかりに心を奪われず、若手の憧憬の対象となるマネージャー像を描きたい。

令和7年6月9日第3500号2面 掲載
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