【助成金の解説】キャリアアップ助成金(正社員化コース)/岡 佳伸

2023.12.29 【助成金の解説】
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令和4年度改正点

① 令和4年4月1日転換から有期→無期転換コースが廃止されました。これにより正社員(正規雇用労働者)に転換しない限り支給されないことになりました。正社員転換後派遣社員として就労している場合は無期転換と扱われますので、派遣会社では活用が困難になりました。
② 令和4年10月1日以降に正社員転換等を行う場合は、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限ることとされました。よって、賞与も退職金も支給していない会社は対象外になります。
③ 令和4年10月1日以降に転換等する場合は、転換後に試用期間が設けられている場合、正社員待遇の適用の有無に関わらず、正規雇用労働者に転換等したものとは見なされません。就業規則に「正社員採用後試用期間を3カ月設ける」等の規定がある場合は無転換したものみなされ助成金の対象外になる可能性があります。
④ 令和4年10月1日以降、転換対象となる有期雇用労働者等については、賃金の額または計算方法が「正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6カ月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者に変更になります。例えば契約社員と正規雇用労働者とで異なる賃金規定(基本給の多寡や昇給幅の違い、賞与、諸手当の違い)などが適用される必要があります。また、異なる賃金差には通勤手当の違いや固定残業代の有無や時間差は含まれません。実質的な差が無く形式的な差、例えば規定に「正社員には賞与を支給する、非正規社員に賞与を支給しない」としているのにも関わらず非正規社員にも賞与が支給されている場合は、待遇差と判断されない可能性があります。
⑤ 令和4年10月1日以降適用される雇用区分の就業規則等において契約期間に係る規定がない場合は、転換前の雇用形態を無期雇用労働者としてとりあつかわれます。

受給のポイント

① 原則6カ月以上勤務している有期契約社員等または派遣社員(派遣先として受け入れている者)を正社員転換後に、6カ月間雇用が定着した後に支給申請することができます。
② 転換の際には試験(面接試験または筆記試験、両方の併用等)等で選考する必要があり、その転換に関する規程を就業規則等で定める必要があります。正社員登用に関する資料(面接試験表等)を保管している必要があります。
③ あらかじめ、正社員で求人した者、正社員転換が予定されている者は対象外です。
④ 初回の支給申請は正社員転換後から6カ月間に係る給与が支給されてから2カ月以内に申請することになります。支給申請日までに退職している者は対象外ですが、本人の自己都合または懲戒解雇等で退職している場合は支給申請出来ます。
⑤ 転換後6カ月間の賃金を、転換前6カ月間の賃金より3%以上増額させている必要があります。昇給の場合は固定的な賃金(基本給または就業規則等で規定されている諸手当)により増額しなければなりません。
⑥ 2期目の支給申請の際には正社員になってからの待遇が合理的な理由が無く引き下げている事業所は対象外になります。
⑦ 当該転換日の前日から起算して6カ月前の日から1年を経過する日までの間に、当該転換を行った適用事業所において、雇用保険被保険者を解雇等事業主の都合(退職勧奨を含む)により離職させた事業主は対象になりません。
⑧ 有期雇用労働者等から正規雇用労働者に転換または直接雇用される場合、当該転換日または直接雇用日の前日から過去3年以内に、当該事業主の事業所または資本的・経済的・組織的関連性からみて密接な関係の事業主において正規雇用労働者として雇用されたことがある者、請負若しくは委任の関係にあった者または取締役等役員であったものは対象外となります。契約社員雇用する前にフリーランス(請負等)で働いていた人を対象にすることは出来ません。
⑨ 特定求職者雇用開発助成金等他の常用雇用を目的とする助成金の対象になった者については、キャリアアップ助成金の対象とすることは出来ますが、支給申請区分として無期→正規の区分となります。
⑩ 正社員化後に社会保険加入の条件を満たす場合は転換後、社会保険加入していなければ対象者には出来ません
⑪ 全てのキャリアアップ助成金に共通しますが、事前に「キャリアアップ計画」を作成して労働局に届出る必要があります。キャリアアップ計画書の内容、例えばキャリアアップ管理者や労働者代表が変更になった場合は変更の届出をしなければなりません。

お勧めポイント

 当初の有期契約の期間で見極めを行い、正社員登用を図るという面では、慎重な採用とその後の定着という流れを作ることが出来ます。ただし、非常に多く申請されている助成金ですが令和4年度の改正により条件を満たすのが難しくなったと言えます。多くの会社で就業規則等の見直しが必要になります。正社員の昇給制度、賞与、退職金制度の中身も審査されます。非正規社員との待遇差も実質的な差があるかが問われます。

相談先

各労働局・ハローワーク

就業規則参考条文

正社員登用規定
第00条(正社員、無期契約雇用社員登用)
 勤続6カ月以上の非正規社員の者(有期契約雇用社員及び無期契約雇用社員等)または有期実習型訓練修了者で本人の希望する者、派遣社員等は、社員就業規則第00条の規定に基づき正規雇用、無期契約雇用に転換させるまたは採用することがある。
2 転換時期は毎月1日または随時とする。
3 代表または取締役、管理職等の推薦がある者に対し、⾯接試験を実施し、合格した場合について転換することとする。

令和4年10月1日以降転換にかかる就業規則参考条文

(昇給規定)
(例)昇給は勤務成績その他が良好な労働者について、毎年〇月〇日をもって行うものとする。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は行わないことがある。
(例)毎年1回、各等級の役割遂行度を評価し、人事評価基準に基づき基本給の増額を行う。
(賞与規定)
(例)賞与は原則として毎年6月と12月の給与支給日に在籍したものに支給する。支給額は人事評価および会社の業績に基づき個別に決定する。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は支給時期を延期または支給しないことがある。
(非正規社員と異なる区分を表す例)
(例)非正規社員はその契約期間内は昇給を行わない。
(例)非正規社員には原則賞与を支給しない。
(例)正社員には役職手当を任用に応じて支給する。役職手当の額は店長5万円とする。非正規社員には役職手当支給しない(非正規社員にも店長に任用した場合は、店長手当を支給するが3万円とする)。
(契約社員の契約期間についての記載例)
(例)有期契約労働者の雇用期間は1回の契約期間につき3年以下とする。個々の労働者の雇用契約期間は労働条件通知書等で別途定める。
(試用期間の例)
(例)入社時から試用期間を3カ月設ける。試用期間中に適性や能力に欠けるもの、出勤率が著しく低い者は正社員登用を行わない。非正規社員から正社員登用したものには試用期間の規定を適用しない。

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