「職場うつ」に迅速対処/井手社会保険労務士事務所 所長 井手 静雄

2013.12.16 【社労士プラザ】

井手社会保険労務士事務所 所長
井手 静雄 氏

 私の母は重度の精神障がい者(統合失調症)だった。私が幼少期だったころに発症し83歳で亡くなるまで五十数年間、瞬時も油断が許されない日々を過ごしてきたが、3年前に安らかな最後を迎えた。

 発症当時の社会環境は過酷なものがあり、福祉は整っておらず、障がい者や家族への差別も根強くあった。家計は苦しく、壮絶な日々だったという記憶しか残っていない。

 紆余曲折の青春期を過ごしたが、小学生の頃より向学の思いは高く、大学の法学部に入学、民法と労働法に大変興味を持ち、卒業後は、働きながら宅建主任者、行政書士、社会保険労務士と資格を取得し37歳で開業。早22年が過ぎ去った。

 ここ数年「最近社員がうつ病になりました。どうしたら良いでしょうか?」という質問を多く受けるようになった。厚生労働省が発表した「患者調査」によると、平成20年に患者数は100万人を突破しており、潜在的にはおよそ5倍の人々が精神を病んでいるというのが日本の実態といえるかもしれない。

 職場でうつ病になるケースは様ざまであり、真面目で几帳面な性格が原因だったり、周囲に気を遣いすぎる中高年の人たちや何事もトコトン頑張るタイプの人たちが無理をして燃え尽きてしまう場合などが多い。また、経済不況による将来の人生設計に対する不安感や、成果至上主義による職場でのコミュニケーションの希薄化や孤立化もその遠因となっている。

 最近は、若手社員に多くみられる、いわゆる「新型うつ」が急増している。これは、職場での失敗、ミスは自分が悪いのではなく、会社の制度や上司の指示が悪いからだと責任を自分以外の人に転嫁するものである。

 私は、連絡を受けたらすぐに会社に駆けつけ、相談に乗るようにしている。そして、事業主の安全配慮義務の観点から、社員と面談し、医療機関への受診や療養の態勢をアドバイスし、そして欠員が出た部署の人員確保などのフォローを行う。一刻も猶予のできない対応処理こそ社労士としての「私」の真骨頂と考えているからである。

 今は、ふと、母に対する感謝の思いでいっぱいになってしまう自分が、そして社労士として生きがいを感じている自分がとっても嬉しくてたまらない。

井手社会保険労務士事務所 所長 井手 静雄【佐賀】

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掲載 : 労働新聞 平成25年12月16日第2949号10面

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