【主張】投資はむしろ大学教育に
産学間で大学人材教育に関する認識をすり合わせ、産業界としても実践的な教育などを支援していくべき――中部5県の企業・法人を会員に持つ中部経済連合会は、このほどまとめた大卒理系人材の採用難に関する報告書で、産学連携の必要性を訴えた。採用計画に対する充足率が低下している背景の1つとして、東京圏や関西圏に比べて高卒の就職比率が高く、理工系学部の学生数が必ずしも多くないなどを指摘している。
今年1~2月に中経連が会員企業へ実施した調査によれば、今春卒の大卒理系人材の充足率が7割に満たない企業割合は、38%に上った。文系では20%に留まるのに対し、無視できない差が付いている。報告書ではこうした現状を憂い、4つの仮説を立てて検証した。
そのうちの1つが産学の認識のギャップであり、各社に理系人材を確保・育成するために必要な対応策を尋ねたアンケートでは、大学での育成に対する期待は総じて低位に留まったとしている。賃上げ・処遇改善(53%)や中途採用の拡大(35%)、働き方改革の推進(34%)などを挙げる企業の多さに比べ、「産学連携の強化・大学との共同研究の拡大」は8%、「理工系学部の定員拡充・新増設」は7%だった。「大学院博士課程の社会人枠の拡充」に至っては、わずか1%に留まっている。
報告書ではこうした実態を受け、賃上げなどの企業努力のみではいずれ限界を迎える可能性があると指摘し、いわば大学教育への投資の必要性を強調した。「中部圏ならではの実践的な理工系教育」に向けた支援として、具体的に企業が持つ研究施設の活用や、企業の技術者と学生との交流機会を拡充することなどが考えられるとしている。
次世代の産業人を確保したい企業と学業優先を唱える大学側との間で、認識のギャップが生じるのはこれまである意味、必然だった。他方で理系人材の数を維持し、他地域から呼び寄せるとの狙いなら、双方のニーズは合致しよう。地域を挙げて産学で次世代人材育成を進める理想には、期待せざるを得ない。