【主張】マタハラ社会に将来なし

2015.11.02 【社説】

 厚生労働省は平成28年度、いわゆる職場におけるマタニティーハラスメントの未然防止対策に力を入れる意向を固めた。本紙報道(10月12日号1面)によると、次期通常国会で男女雇用機会均等法を改正して事業主の取組みを促すとともに、啓発・指導に向けた未然防止キャラバンを開始するという。

 背景には、女性活躍推進に対する現政権の強い意気込みもあるが、平成26年10月の最高裁判決の影響も大きい。厚労省による是正勧告や企業名公表、さらに裁判沙汰となって、信用失墜とならないよう、同最高裁判決の内容とその後に出された厚労省の解釈通達に沿った企業運営に徹する必要性がある。

 厚労省の姿勢変化の兆候はすでに今年9月時点で表面化していた。妊娠を理由として女性労働者を解雇した茨城県内の医療法人名を、均等法第30条に基づいて初めて公表した。こうしたアウトローを放置すれば、女性活躍推進にとって大きなブレーキとなる。

 最高裁によるマタハラ初判断がその姿勢変化の基盤となっていよう。均等法の妊娠、出産、産前・産後休業の請求を理由とする解雇、不利益取扱い禁止規定は、「強行規定」であり、これに反する行為は無効とする考え方が司法によって確認された。

 最高裁判決を受けて発出した厚労省の解釈通達は、不利益取扱いは原則として均等法違反だが、業務上の必要性や一般的労働者であれば合意するような合理的理由が存在すれば、例外として違反とはならないという内容である。

 28年度の予算措置として展開する「マタハラ未然防止対策キャラバン」(仮称)は、こうした最高裁判決の内容や例外的取扱いの周知・啓発が柱となろう。均等法改正においても、最高裁判決に沿った対策が考えられる。

 マタハラは、欧州諸国などではすでに問題視されていないといわれる。後れを取っているわが国においては、まず企業経営者を含めた社会全体の意識を変えていくための周知・啓発が出発点となる。働く女性が妊娠・出産を諦める社会に将来はないことを自覚すべきである。

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掲載 : 労働新聞 平成27年11月2日第3039号2面

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