【主張】押し上げたい労働分配率

2017.11.06 【主張】
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 雇用情勢が大きく好転しているにもかかわらず、見合った賃金水準の上昇がなく、結果として消費拡大につながらない事態が続いている。背景には、労働分配率の下落傾向があり、なんとしても改善を図る必要がある。日本経済がデフレ脱却、成長率拡大をめざすなら、企業は改めて労働分配率のあり方を問い直すべきである。

 厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、2016年の現金給与総額は就業形態計で31.6万円で、前年比0.5%増加した。08年のリーマン・ショックにより大幅下落した後も低迷が続いたが、ようやく13年以降は上昇基調に転じている。

 これに対し労働分配率は、リーマン・ショック以降の下落傾向に歯止めが掛からず、15年には67.6%となっている。10年前後は70%を超えていたにもかかわらず、03~07年と同様の低水準に戻ってしまった。

 労働分配率とは、企業が稼ぎ出した付加価値のうち労働者に分配する部分を指す。従って、景気が回復して分母となる付加価値が拡大すると、低下する傾向があるのは確かである。労働分配率が低いからといって、一概に状況悪化と判断されるわけではない。

 しかしこの間、異次元の金融緩和により失業率をはじめとする雇用情勢が急激に回復し、賃金押上げ条件が整ってきたにもかかわらず、なかなか結果が出ていない。これ以上は下がらないという自然失業率に到達するまで賃金上昇はないとする見方もある。

 要因は1つだけとはいえないだろうが、企業としては、進行しつつある人口減少を直視し、将来を見据えた労働力の確保・育成にもっと投資すべき時期に来ている。付加価値の資本への配分は将来の備え、一方で労働への分配は現在への投資という考え方は理解でき、これが現在の内部留保拡大をもたらしている。

 発想を転換し、労働力の確保・育成も企業の将来的な発展を約束するものとして見直してもらいたい。消費税増税によって、毎回多大なダメージを受ける経済体質をいつまで続けるのか。労働分配率がカギを握っている。

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平成29年11月6日第3135号2面 掲載

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