懲戒発覚おそれ辞めたと事務員の退職金ゼロに 「解雇相当」でも半額命じる 医療法人貴医会事件(大阪地判平28・12・9)

2018.05.17 【判決日:2016.12.09】

 退職後に懲戒解雇事由が発覚したとして、退職金なしとされた病院の元事務員が全額の支払いを求めた。規定では懲戒解雇時のみ不支給としていたが、大阪地裁は、退職届により労働契約は終了したものの、発覚した診療情報の改ざんは懲戒解雇相当であり、後払いとともに功労報償的性格を有する退職金の5割を超える請求を権利濫用として、約250万円の支払いを命じた。

退職は有効に成立 減額の規定ないが

筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)

事案の概要

 Xは、医療法人であるYにおいて医療事務に従事していた者であるが、診療情報の改ざんを問いただされた時期に退職届を提出し、その後、自己都合退職の退職金を請求した。請求を受けたYは、診療情報改ざんを理由として、遡って懲戒解雇とし、退職金を支給しなかった。Yの職員退職金規程には、懲戒解雇された者、禁固以上の刑に処せられて失職した者またはこれに準ずる退職をした者、臨時雇用の者には、退職金を支給しないと定められていたが、自己都合退職の場合の支給制限はなかった。

 Xは、改ざん行為を否定して退職金の支払いを求めるとともに、違法な退職勧奨を受けたとして、不法行為に基づく損害賠償および遅延損害金を求めて提訴した。

 これに対し、Yは、懲戒解雇を理由に退職金の不支給を主張し、また、これが認められないとしても退職金請求は権利濫用であると主張した。

判決のポイント

 1 懲戒解雇を理由とする不支給

 Xが、本件退職届を提出した日の翌々日の午後以降、労務を提供しなかったこと、代表者及び院長に対し、退職の挨拶を内容とする葉書を送付したこと、健康保険証を返却したことによれば、…

この記事の全文は、読者専用サイトにてご覧いただけます。
読者専用サイトへログイン 読者専用サイトへはこちらからログインしてください。
※読者専用サイトは、定期刊行物(労働新聞または安全スタッフ)の購読者専用のサイトです。詳細・利用方法は、読者専用サイトのご案内をご覧ください。
ジャンル:
掲載 : 労働新聞 平成30年5月21日第3161号14面

あわせて読みたい

ページトップ