国・豊橋労基署長(マツヤデンキ)事件(名古屋高判平22・4・16) 心臓疾患抱える販売員が死亡、労災不支給の判断は 障害を悪化させる労働負荷 ★

2010.11.15 【判決日:2010.04.16】
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 障害者枠で採用された家電量販店の販売員が心臓疾患を悪化させ死亡し、労災給付を不支給とされたため取消しを求めた。一審は短時間の残業を理由に棄却したが、名古屋高裁は、業務起因性の判断は平均的労働者ではなく障害者が基準になると判示。「心機能分類」の基準を超える強度の労働で過重であり、自然的経過を超えて疾病を増悪させたとして業務上と認定した。

本人基準で判断を 残業時間少ないが

筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)

事案の概要

 太郎は、平成9年11月11日、心房細動により家庭内での日常生活活動が著しく制限される心臓機能障害(身体障害等級3級)を有するとして障害者手帳の交付を受けた。その後、太郎は、平成12年11月10日、M電気に障害者雇用枠で採用され、豊川店で勤務することとなった。

 豊川店における太郎の主な業務は、平成12年12月中旬までがゲーム機販売における接客販売業務で、立位でレジ打ちを主に行った。その後24日までパソコン売場での接客販売業務に就き、立位で商品の説明、レジ打ちを主に行った。豊川店では、採用時に太郎から得た身体的な情報から基本的には残業をさせない方針であったが、太郎の死亡まで1カ月で合計33時間の時間外労働を行わせた。

 平成12年12月24日、太郎は自宅において慢性心不全を基礎疾患として、致死的不整脈および心停止を発症し、死亡した(以下、「本件災害」という)。なお、M電気に就職した当時、太郎の症状は、心不全の重症度を示す指標によればNYHAⅡであり、立位での商品販売業務等は、8時間の継続的な仕事の場合であっても、望ましい運動耐容能である60%未満を超えたものであった。

 一審(名古屋地判平20・3・26)は、死亡1カ月前の時間外労働33時間が、1カ月45時間を下回っていることなど、業務の量的過重性、質的過重性ともになかったとして、太郎の死亡の業務起因性を否定した。…

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平成22年11月15日第2801号14面 掲載

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