【自然災害時に知っておきたい企業の労務管理】第1節 労働時間管理(2)

2020.03.12 【自然災害時に知っておきたい企業の労務管理】
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6.雇用調整助成金の利用

 雇用の維持を図るために、行政窓口は、休業等を実施する事業主を対象として雇用調整助成金(中小は中小企業緊急雇用安定助成金)の利用を勧めるとしています。

 雇用調整助成金は、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一次的に休業等を行った場合、休業手当相当額の一部※を助成する制度です。申請に当たっては、所轄のハローワーク等に相談してください。

※休業の場合の助成率は、次のとおりです。

雇用調整助成金

休業手当または賃金の3分の2(下記条件を満たせば4分の3)

中小企業緊急雇用安定助成金

同5分の4(同10分の9)

 4分の3または10分の9の助成率を適用する要件は、判定基礎期間の末日の労働者数が比較期間(計画届提出日の属する月からさかのぼった6カ月間)の平均労働者数の5分の4以上であり、判定基礎期間と比較期間の間に解雇等をしていないことです。

 雇用調整助成金については、平成23年3月17日に「特例の発動」を決定し、4月5日に「適用範囲の拡大」を実施しています。5月2日には、第一次補正予算により「さらなる適用拡大」が図られました。ただし、地域が限られるので、その点は要注意です。

対象事業所

・青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、千葉、新潟、長野の各県の災害救助法適用地域に所在する事業所(①)
・①の事業所と一定規模以上の経済的関係(3分の1以上)を有する事業所(②)
・②の事業所と一定規模以上の経済的関係(2分の1以上)を有する事業所

損失の程度

・生産指標(生産量、売上高等)の最近1カ月の値がその直前1カ月または前年同期に比べ5%以上減少
・生産指標の震災後1カ月の値がその直前1カ月または前年同期に比べ5%以上減少見込み(平成23年6月16日まで)

支給日数

 雇用調整助成金は、支給日数に上限が設けられています(3年300日等)。しかし、今回特例では、これまでの支給日数に関係なく、特例対象期間(1年)中については最大300日まで支給します。

被保険者期間6カ月未満の扱い

 平成23年7月1日から、「被保険者期間6カ月未満」の者は支給対象から外す改正が実施されています。しかし、7月以降も特例対象地域に限っては、引き続き「6カ月未満」を支給対象とする「暫定措置」を講じます。

 なお、特例の対象とならない地区等でも、震災により「事業活動の縮小」を余儀なくされれば、通常の要件に基づき、雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)の申請が可能です。

7.雇用保険の特例の利用

 休業については、上記の「雇用調整助成金」のほかに、雇用保険制度の特例が設けられています。

 激甚災害法(激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律)に基づき、「事業の休止・廃止により休業する労働者は、失業とみなして雇用保険給付(基本手当など)」が支給されます。

 今回、対象地域は「全国の区域」と定められています(平23・政令第18号)。ただし、「地震により直接の被害を受けた」事業所が対象となる点には注意が必要です(平23・3・18職発0318第4号)。事業所(建設・請負現場等含みます)の施設等が被害を受けず、経済的な(取引上の)理由で休業するケース等は除かれます。

 雇用保険の特例については、派遣先・請負先の施設等が被災したときも、適用対象になるとされています。

 特例の給付を受けるときは、「雇用保険被保険者休業証明書」に賃金台帳その他の書類を添えて、ハローワークの窓口に提出します。事業主は、従業員から休業証明書の交付を求められたら、交付しなければならないと定められています。

 休業でなく離職であれば、特例によらず基本手当等の支給申請ができるのはいうまでもありません。しかし、通常、「事業再開後の再雇用が予定されている」場合には、給付の対象から除かれます。

 今回の震災との関連では、災害救助法の指定地域にある事業所が、災害により事業を休止・廃止したため一時的に離職を余儀なくされた場合は、再雇用の予定があっても失業給付の申請を受けつけてくれます。

 雇用保険制度では、現在、暫定措置として「個別延長給付」という仕組みを設けています(平成24年3月31日まで)。この個別延長給付に関しても、震災に関連して特別の措置が講じられています。

 基本手当の所定給付日数は、離職理由、被保険者であった期間、年齢等に応じて定められています。所定日数分の基本手当を受給し終わると、たとえ、まだ就職が決まっていなくても、手当の支給が打ち切られてしまいます。

 しかし、具体的な事情やその折々の雇用失業情勢によって、給付日数の延長を認めるケースがあります。個別延長給付もその一種です。

 対象となるのは、特定受給者および特定理由離職者(労働契約の更新を拒絶された者に限ります)で、次のいずれかに該当する人です。

・離職の日において45歳未満である者
・雇用機会が不足していると認められる地域に居住する者
・その他、ハローワーク所長が本人の知識・技能・職業経験その他の事情を勘案して再就職支援を計画的に行う必要があると認めた者

 延長期間は、原則60日で、「被保険者期間20年以上、35歳以上60歳未満である者」については30日です。

 東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律(第3節の「2.震災特別法」を参照)では、上記の「個別延長給付」の給付日数の延長を定めました。

 原則の支給日数60日が120日に、「被保険者期間20年以上、35歳以上60歳未満である者」を対象とする場合は30日が90日にそれぞれ読み替えられます。

 対象となるのは、次の人たちです。

① 激甚災害法の雇用保険の特例措置(休業中の給付)を受けている人
② 災害救助法の適用区域を対象とする特例措置(一時離職中の給付)を受けている人
③ ①および②以外で今回震災の被害を受けたため離職した人

(続く)

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